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首相の諮問機関「地方制度調査会」が、多様な人材の参画を促す地方議会の実現に向けた答申案をまとめた。近く岸田文雄首相に提出する。
人口減少などで議員のなり手不足が問題になる中、夜間や休日の議会開催などの柔軟な議会運営で、政治活動を後押しするよう求める内容だ。
地方自治体は、首長と議会の議員を住民が投票で選ぶ二元代表制をとることが憲法で規定されている。地方自治の根幹が機能不全に陥らないよう、実効的な改革を急がなければならない。
地方議会が直面するのは、過疎化と高齢化という構造的な人口問題である。従来の議会運営を漫然と続けるだけでは地方政治のさらなる停滞を招きかねない。
なり手不足の解消に向けた努力は極めて重要である。同時に、個々の議員が実のある議論を行う改革も断行しなければ、その存在意義が問われると認識すべきだ。
答申案は、高齢の男性に偏る議員構成を変革するため、意欲のある人が議会に参加しやすくなる立候補の環境が必要とした。例えば、企業の自主的な取り組みとして立候補に伴う休暇制度導入や副業・兼業での議員活動を可能とする就業規則の変更を求めた。
多様な意見を地方政治に反映させるため、若年層や女性など幅広い人材が参画する意義は、かねて指摘されてきた。だが、そのための地方の対応はいまだ鈍い。
全国1700超の市区町村のうち夜間や休日に開催している自治体は40あまりにすぎない。仕事を終えた後に政治活動が行えるよう取り組みを加速させるべきだ。
限界集落など過疎化の現状を踏まえれば議員定数の削減なども避けては通れない。答申案はそんな中長期的視点が十分ではない。
人口約400人で議員定数6という高知県大川村では定員が満たず議会存続の危機に陥ったこともあった。全国の自治体のほぼ半数が将来的な消滅の危機を指摘されたことも踏まえれば、市町村ごとの議会維持が難しくなる可能性も想定しなくてはならない。
すでに定数を上回る立候補者がおらず無投票選挙となっている地方議会はたくさんある。平成31年現在、無投票当選者は都道府県議会が3割弱、町村議会で2割を超える。人口分布に基づく自治体の再編も含めて抜本的に地方自治のあり方を考えるべきときだ。
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2022年12月16日付産経新聞【主張】を転載しています