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義務教育段階の年齢で学校に通っていない、不就学の可能性のある外国籍の子供が全国で8千人以上いることが文部科学省の調査で分かった。
令和元年の初調査時の約2万人から減ってはいるが、なお少なくない数で、自治体による取り組みの差もある。
外国籍の子供に就学義務はないが、社会の一員として教育が重要なことに変わりはない。教育の「空白」をつくらぬよう、さらに手立てを工夫したい。
外国人の増加に伴い、国は医療や福祉など各分野で支援を図っている。就学状況を把握する今回の調査(4年5月時点)で、全国の市町村の住民基本台帳に登録されている6~15歳の外国籍の子供は、小学生相当で約9万6千人、中学相当で約4万人に上る。
うち小中学校や外国人学校に通っていないと確認された「不就学」に加え、状況が確認できなかった子供らを合わせると、不就学の可能性のある子供は計8183人だった。
親と接触できないなど、就学状況を確認できないケースがなお多い。自治体によっては通訳も確保できていない。外国人の出身国もブラジルやフィリピン、ベトナムなど多様化し、居住地も全国に広がっている。自治体は人ごとではないと認識して対応すべきだ。
静岡県浜松市や岐阜県可児市のように以前から「不就学ゼロ」の目標を掲げ、効果をあげている自治体もある。住民登録窓口での働きかけをはじめ、国際交流協会などの協力を得て通訳を同行した家庭訪問など、関係部署の連携は他の自治体の参考になろう。
就学後の教育では、日本語指導の拠点校整備やNPOと連携した指導態勢の充実などが進められている。日本語の指導とともに、母国の言葉や文化を大切にする教育も留意されている。
国際人権規約では外国人の子供たちにも教育の機会が保障されている。文科省有識者会議の報告書が指摘するように日本人、外国人を問わず生活の基礎を身に付け、その能力を伸ばす教育は、豊かな地域社会の形成にもつながる。日本の子供にとっても、多様な文化背景を持つ外国人の子供らと日常的に接する機会は重要だ。
外国籍の子供たちが教育の機会を与えられず、孤立化することは日本にとっても決して好ましいことではない。
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2023年5月21日付産経新聞【主張】を転載しています