天皇陛下は、85歳の誕生日を迎えられた。国民と苦楽をともにし、歩まれてきた陛下に、心からお祝いと感謝を申し上げたい。
来春の譲位を控えて、平成最後の天皇誕生日である。陛下は、これに先立つ記者会見で「象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と述べられた。常に国民を思うお気持ちが察せられる。
陛下は平成15年に前立腺がんの手術、24年には心臓のバイパス手術を受けるなど大きな病を経験された。ご高齢にもかかわらず、長くお務めに精励されてきた。
そのお姿に、どれだけ国民が勇気づけられたことだろう。
7年の阪神大震災、23年の東日本大震災など、大災害があれば、皇后さまとともに現地に赴き、避難所の床に膝をつき、被災者に声をかけ励まされた。
今年も災害の多い年で、西日本豪雨や北海道地震の被災地などを訪問されている。
先の大戦戦没者の「慰霊の旅」も続けられてきた。
戦後50年の節目に広島、長崎、沖縄などを訪問された。戦後60年にはサイパン島、戦後70年にはパラオのペリリュー島など、遠い激戦の地にも足を運ばれた。
諸外国との親善交流などで果たされてきた役割は計り知れない。陛下の歩みとともに、平成史を改めて振り返る機会としたい。
日々のご公務などは多く、激務である。目に見える以外にも、宮中祭祀(さいし)を通じ、国民の安寧と豊穣(ほうじょう)を祈られている。
古来、国民は「大御宝(おおみたから)」といわれる。
天皇は国民のために祈り、国民は天皇に限りない敬意と感謝の念を抱いてきた。それが日本の歴史と国柄である。「祈り」は天皇の本質的、伝統的役割であることを国民は知っておきたい。
陛下は皇室の伝統を守りつつ、時代を踏まえて行動され、国民の支持を集めてきた。
記者会見では、ともに歩まれてきた皇后さまへの感謝も明かされた。来年、ご結婚から60年を迎える。皇位を継がれる皇太子さまの誕生日は2月23日である。
天皇は日本国と国民統合の象徴であり、皇位が安定して続いていくことは国民の願いである。皇室に一層の理解を深め、弥栄(いやさか)を祈りたい。