~~
政府は南太平洋の島嶼(とうしょ)国・地域の首脳らを東京に招いて、7月16日から3日間の日程で「第10回太平洋・島サミット」を開く。
3年ごとに行っているが、前回は新型コロナ禍の影響でオンライン開催になったため、対面は6年ぶりだ。
南太平洋地域は地球温暖化による海面上昇やサイクロンに悩まされている。日本はこれらの問題への対処や島嶼国の経済発展で一層寄与していきたい。
同時に中国の動向に対し警戒を緩めてはならない。同地域は台湾有事の際に米海軍の接近を阻止するために中国が設定したとされる防衛ライン「第2列島線」上にある。このため中国は巨額な援助で関係を深め、軍事面でも影響力を増している。
2019年にソロモン諸島とキリバスが、今年1月にはナウルが台湾と断交し、中国と国交を樹立した。
中国は22年4月、ソロモンと中国軍の駐留を可能とする安全保障協定を結んでいる。同年5月には島嶼国と外相会議をオンラインで開き、習近平国家主席は「運命共同体を構築したい」と呼びかけた。
中国は南シナ海に人工島を造成し、軍事施設を造った。南太平洋でも情報通信施設の建設や港湾などの軍事拠点化が懸念されており、これを許せば安保環境に大きく影響する。
南太平洋はアジア、米国とオーストラリアを結ぶ海上交通路(シーレーン)でもある。
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現するため、日米豪で連携し、中国の南太平洋地域への影響力拡大を阻止しなければならない。
同サミットに向けた2月の閣僚会合では、議長総括に中国を念頭に置いた「力または威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」との文言が盛り込まれた。首脳宣言にも明記し、中国に対する危機認識の共有を図ることが必要だ。
中国に対抗するため米国は、23年2月にソロモンに大使館を開設したと発表した。同年5月にはパプアニューギニアと防衛協力協定を締結し、パプアの海軍基地や空港、港湾などが共同利用できるようになった。
日本は島嶼国に対し海上法執行や災害救援などの分野で、自衛隊や海上保安庁による能力向上の支援を行ってきた。これらの協力も強化すべきである。
◇
2024年7月14日付産経新聞【主張】を転載しています