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東京都議会は12月15日、全国初となる東京都の新築戸建て住宅などへの太陽光パネル設置を義務付ける条例を可決した。都は令和7年4月からの義務化を目指しているが、審議の過程で明らかになった数々の疑念を、小池百合子知事は明確に説明できなかった。拙速な条例制定は極めて遺憾だ。
都は12年までの「カーボンハーフ」(温室効果ガス排出量半減)を目標に掲げている。目標実現の一環として条例では、一戸建て住宅を含む延べ床面積2千平方メートル未満の新築建物を建設する大手住宅メーカーに太陽光パネルの設置を義務付けるもので、都内新築棟数の約半数を想定している。
だが、条例には将来に禍根を残す問題点があまりにも多い。
第一にパネル設置の初期費用に約100万円かかり、住宅建築費に上乗せされる。推奨ではない「義務化」は国民の財産権を侵害し、憲法94条に定める「法律の範囲内」という自治体の条例制定権を逸脱している疑いがある。
環境や防災面でもデメリットが多い。太陽光パネルの多くは、原料に鉛など有害物質が使用されており、リサイクル体制も確立していない。また、火災に弱く、通常の高圧放水を消防士ができない事実を都民に知らせていない。
何よりも人権問題に無頓着すぎる。世界における太陽光発電用の多結晶シリコンは約8割が中国製で、半分以上が中国政府による人権弾圧が指摘されている新疆ウイグル自治区で生産されている。
都のホームページでは、「国内メーカーのヒアリングによれば、当該地区の製品を取り扱っている事実はない」との回答を得たとしているが、都が真剣に調査した形跡はない。しかも住宅・産業用を含めた太陽光パネルの日本企業シェアは43%にしか過ぎない。
新疆ウイグル自治区からの輸入を禁じる「ウイグル強制労働防止法」が施行されている米国では、中国製太陽光パネルの輸入が差し止められている。亡命ウイグル人でつくる「世界ウイグル会議」総裁は、「都はジェノサイド(民族大量虐殺)に加担することになる」と、厳しく批判する。
地球温暖化を食い止めるためには、再生エネルギーや原子力発電の活用は不可欠だが、経済的負担や人権侵害に目をつむっていいはずがない。小池知事と都議会に条例の即時見直しを強く求める。
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2022年12月16日付産経新聞【主張】を転載しています