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宇宙空間に核兵器や大量破壊兵器を配備しないよう各国に求める内容で、日米など65カ国が共同提案した国連安全保障理事会の決議案が否決された。
常任理事国のロシアが拒否権を行使し、中国は棄権した。
ロシアと中国は宇宙空間での軍事力を強化しており、国境のない宇宙は「新たな作戦領域」となっている。各国や企業が宇宙空間で運用する衛星は、軍事情報の収集のほか、気象や通信、農業などの民間サービスを支えている。
これらの衛星が攻撃されれば、世界の安全保障や経済、日常生活は大混乱に陥る。核兵器による攻撃であれば、破滅的な被害が予想される。
ロシアの拒否権行使は、宇宙空間の安全を脅かす無責任な行為で断じて許されない。
ロシアのネベンジャ国連大使は、決議案を「不合理で政治的」と決めつけ、「宇宙空間でのあらゆる種類の兵器を禁止するには不十分だ」と拒否権行使の理由を説明したが、詭弁(きべん)というほかはない。
決議案には「地球周回軌道への配備を想定した核兵器や大量破壊兵器の開発も禁じる」との条項も盛り込まれていた。
プーチン露大統領は「核兵器を宇宙に配備するつもりはない」と語っている。しかし、米政府高官は「米国は、ロシアが核兵器を搭載した新しい衛星を開発しているとみている」と述べ、警戒を強めていることを明かした。
決議案には全15理事国のうち中露を除く13カ国が賛成した。米国は中国を「無責任なロシアを『ジュニアパートナー』として擁護した」と皮肉った。
中露両国は、他国の衛星をレーザーなどで破壊する「キラー衛星」の開発・配備を進めてきた。中国は2007年にミサイルによる衛星破壊実験を行い、大量のデブリ(宇宙ゴミ)をばらまいて、国際社会から非難された。ロシアも21年に同様の破壊実験を行った。
中露の動向を受け、日本政府は昨年6月、国家安全保障戦略に基づく「宇宙安保構想」を決定し、防衛目的の宇宙利用を拡大していく方針を示した。
日米はすでに宇宙領域での協力を深化させる方向を確認している。宇宙の平和と安全の維持のため、各国は連携して抑止力向上を急ぐべきだ。
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2024年4月30日付産経新聞【主張】を転載しています