国連安保理による非難決議案への拒否権を行使するロシアのネベンジャ国連大使
=2月25日(AP)
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ロシアのウクライナ侵略で無力さが露呈した国連安全保障理事会の改革に向けた一歩である。
安保理常任理事国(P5=米英仏露中)が拒否権を行使した場合、国連総会でその説明を義務付ける決議案が近く、国連総会で採決される。
拒否権を持つ側であるP5の米国が、共同提案国に名を連ねたことが重要だ。拒否権行使の抑制に向けた意思表示と受け止めたい。日本も共同提案国に加わった。この採択を国連の抜本的な改革につなげられるよう弛(たゆ)まず行動してもらいたい。
安保理は2月25日、ウクライナを侵略したロシアを非難し、軍の即時撤退を求める決議案を採決したが、当事国でありP5の一角であるロシアが拒否権を行使したため廃案に追い込まれた。
3月には人道状況の改善を訴える決議案が検討されたが、ロシアの拒否権行使を見越して安保理での採決が見送られた。結局、安保理ではなく総会で採択された。
ウクライナのゼレンスキー大統領は4月、安保理へのビデオ演説で「ロシアは拒否権を、死をもたらす権利にした」と非難し、同時に安保理改革を強く要求した。
ロシア軍によって、ウクライナの都市は破壊され、多くの人命が失われ、内外で大量の避難民が生じた。大統領の言葉は重く受け止めなければならない。
安保理は、国際の平和と安全に主要な責任を負い、そのため、国連機関で唯一、法的拘束力のある経済制裁などの強制措置を決定する権限が与えられている。
その安保理が無力なら、人類が被る被害は甚大である。拒否権はもちろん、さらなる抜本的な改革が欠かせない。かねて日本はドイツとインド、ブラジルを含む4カ国(G4)の枠組みで常任理事国入りを目指してきた。P5は第二次世界大戦の戦勝国であり、国連憲章には、日本やドイツなど敗戦国の旧敵国条項が残っている。
国連改革を着実に前進させるためには、拒否権行使を抑制する今回の決議案のように、まずはできるところから着手することが現実的だろう。大事なことは、それをP5拡大や旧敵国条項の撤廃などの改革につなげることである。
日本にとっては、北朝鮮の武力挑発に対する安保理の対応も大きな懸念だ。制裁強化どころか一致した非難声明も出せない状況は早急に改めなくてはならない。
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2022年4月19日付産経新聞【主張】を転載しています