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北朝鮮による拉致問題の解決に向けた国連のシンポジウムがオンライン形式で開催された。
日本、米国、オーストラリア、韓国、欧州連合(EU)による共催で、韓国が共催に加わるのは2018年以来だった。北朝鮮との融和政策を進めた文在寅前政権から、日米との連携を重視する尹錫悦政権に移行したことによる復帰である。
5月に開催した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、各国首脳から拉致問題解決に向けての全面的支持を取り付けたことと併せ、国際包囲網を構築して拉致被害者全員の即時帰国に結び付けてほしい。最終的には、日朝首脳会談で解決を迫るしかない。
シンポジウムでは拉致被害者、横田めぐみさんの弟で拉致被害者家族会の横田拓也代表が「拉致された子を待つ親世代が存命、健在なうちに再会を果たせなければ解決とは言えない」と訴えた。
松野博一官房長官兼拉致問題担当相は「問題解決には日本が主体的に動き、トップ同士の関係を構築することが極めて重要だ」と述べ、「一瞬たりとも無駄にせず、今こそ大胆に現状を変えなければならない」と強調した。
その通りなのだが、政府や国会は拉致問題解決に熱情をみせてきたか、はなはだ疑問だ。
6月4日付の産経新聞の「めぐみへの手紙」に、母親の横田早紀江さんはこう記した。「国会では、拉致問題はあまり議論されていないようです。『なぜ解決できないのか』『どのような手段があるのか』。具体的戦略を論じ合うことはできないものでしょうか。北朝鮮は政治家、官僚のありさまをつぶさに見ているはずです」
国際包囲網も首脳会談も、日本国民の怒りが根底になくてはならず、これをリードするのは政治の責務である。
北朝鮮外務省の研究員はシンポジウム開催を前に拉致問題は「われわれの誠意ある努力により、すでに完全に解決済みだ」とする文書を公表し、被害者全員の帰国要求には「死んだ人間を生き返らせよというような、むなしい妄想に過ぎない」とまで主張した。
これに松野氏が「全く受け入れられない」と述べたのは当然だが、日本側に拉致問題を軽視される反省はないか。国が一丸となって問題解決に邁進(まいしん)しなければ、北朝鮮は動かない。
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2023年7月2日付産経新聞【主張】を転載しています