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台風7号とそれに伴う大雨の影響で、東海道・山陽新幹線は3日間にわたり大混乱した。東京駅など新幹線各駅は8月17日も帰省客や訪日外国人らで大混雑し、16日は約30万5千人が影響を受けた。
台風上陸が、お盆という最多客期に重なった不運があったとはいえ、多くの課題が浮き彫りとなった。
第1は、計画運休の運用が硬直化しているのではないか、という点である。
JR東海と西日本は、台風7号の本土上陸に先立って、15日は名古屋―新大阪、新大阪―岡山間の新幹線を終日運休することを決めた。翌16日には通常運転を再開した。だが、静岡県内の豪雨によって約5時間半にわたって運転を見合わせ、混乱に拍車をかけた例でもわかるように、運行不能な天候になるとの予報が出たとき、計画運休を実施することは、妥当である。
しかし、当日の京阪神地区は、午後になると風雨はピークを越え、夕刻には計画運休を実施していた近鉄を含めほとんどの私鉄が運転を再開した。新幹線は、私鉄と違い距離が長く、安全確認に時間がかかるとはいえ、同日中に運転を再開することはできなかったのか。
第2は乗客への情報提供が不十分だったこともあって16日は乗客が各駅に滞留したことだ。列車も大幅に遅れ、17日未明に多くの列車が東京駅に到着した。山手線などJR東日本の終電が発車した後で、タクシー乗り場には長蛇の列ができた。
乗客にとっては、余分な出費と労力を強いられたことになる。なぜ、山手線など主要路線で終電を繰り下げる措置をとれなかったのか。費用分担や乗員の確保など課題は多いが、自然災害や大幅な列車遅延が起きた場合に備えて、連携協定をJR各社は結ぶべきだろう。
第3は列車が立ち往生したときの備えが不十分なことだ。
今回は「のぞみ」などで車内販売があったため、一部の乗客は飲料や食物を得ることができた。だが、JR東海は今秋で車内販売の廃止を決定している。駅売店で飲食物を買おうとしても、駅で立ち往生した列車の中にはホームに乗客が降りられなかったケースもあった。
救護所開設など、沿線自治体との連携も不可欠だ。JR各社には、「乗客第一」の危機管理を徹底してほしい。
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2023年8月18日付産経新聞【主張】を転載しています