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岸田文雄首相が、リトアニアの首都ビリニュスで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した。
首相とストルテンベルグNATO事務総長は会談後、16分野での安全保障協力を明記した「国別適合パートナーシップ計画」を発表した。
日本とNATOの安保協力を一段と強化する合意が交わされたことを歓迎したい。
計画は、サイバー防衛や宇宙安全保障、偽情報への対処などでの協力を盛り込んだ。人道支援・災害救援分野でも連携していくが、これにより、自衛隊とNATO諸国の軍の相互運用性の向上が期待できる。
日本とNATOは巨大なユーラシア大陸の東西と北米大陸に位置するが、サイバーや宇宙、偽情報への対処は地理的制約がない。自由や民主主義、法の支配など価値観を共有する両者が協力すれば世界の平和と安定に資する。
NATOは、インド太平洋地域のパートナーとして、日本とオーストラリア、韓国、ニュージーランドを首脳会議に招いた。
首脳会議で岸田首相は、ウクライナ支援に取り組むと表明し「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」との認識を改めて伝えた。「欧州大西洋の同志国の間でも、インド太平洋への関心と関与が一層高まっていることを歓迎」した。
首相が、価値観と戦略的利益を共有するパートナーとして日本とNATOが絆を強めていくべきだと呼びかけたのは妥当だ。専制主義勢力の中露を抑止していくうえで有効だからだ。
一方で、NATOが検討してきた東京連絡事務所開設の決定は、中国を刺激することを恐れたマクロン仏大統領の横やりで結論が秋以降へ先送りされた。
連絡事務所は、東京をハブに豪州、韓国、ニュージーランドの同志国との連絡調整を活発化させ、安保協力を進める狙いがある。
フランス政府はインド太平洋の平和と安定に寄与する姿勢を示してきたが、マクロン氏の鶴の一声で連絡事務所開設に後ろ向きになったとみられる。開設が最終的に見送られれば、中国がNATOのインド太平洋への関心が低いとみなしかねない。岸田政権やフランス以外のNATO加盟国はマクロン氏に翻意を促し、東京連絡事務所開設を実現してもらいたい。
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2023年7月13日付産経新聞【主張】を転載しています