Japan EU Economic Partnership Agreement EPA 2019 005

 

欧州連合(EU)と巨大な自由貿易圏を構築する日欧経済連携協定(EPA)が発効した。

 

日本にとっては、昨年末に動き出した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に続くメガ協定である。高水準の関税撤廃や共通ルールを活用し、日本の新たな成長基盤とするよう期待したい。

 

保護主義傾向の強い米国はもちろん、EU内でも反グローバリズムの風潮が高まっている。これを阻むためにも成果を積み重ね、多国間連携による自由貿易の潮流を根付かせなければならない。

 

日本と欧州は、地理的に遠くても市場経済や民主主義などの普遍的価値を共有する。貿易や投資にとどまらず、安全保障から文化まで、関係をさらに緊密化する好機とすることが重要である。

 

日欧を合わせた国内総生産(GDP)は世界の3割を占め、TPPを上回る。EUは域内に5億人の人口を抱える巨大市場だ。工業製品などの関税撤廃は、もちろん日本の輸出産業を後押しする。

 

同時に、欧州産の質の高いワインやチーズ、豚肉などが割安になり、消費者への恩恵も広く行き渡ろう。暮らしを豊かにすることが自由貿易の大きな意義である。

 

欧州産品と競合する農畜産業は経営基盤の強化が迫られるが、攻めの発想も欠かせない。「神戸ビーフ」など地理的表示(GI)を相互に保護する知的財産権も定められた。ブランド力に磨きをかけて輸出拡大にも取り組みたい。

 

日本が立て続けにTPPと日欧EPAを発効させたことは米国との貿易交渉にも影響しよう。米国の対日輸出が両協定参加国と比べて相対的に不利になるためだ。

 

例えば豚肉の対日輸出は米国やTPP加盟国のカナダのほか、EU域内のデンマークとスペインが上位だ。取り残された米国の業界から早期の日米協定締結を求める声が強まることも予想される。

 

米国が合意を焦っても、日本は慌てる必要はない。むしろ、両協定の発効で、日本の立場は強まったのではないか。交渉を優位に進めるしたたかさを求めたい。

 

日本は米国のTPP離脱後、これを立て直す交渉を主導し、日欧EPAもまとめた。自由貿易の推進役としての期待は大きい。日欧EPAの発効を機にEU諸国との連携を深め、米国が管理貿易的な手法に拘泥しないよう、ともに促していかなければならない。

 

 

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