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今春の利上げで異次元緩和からの転換を図った日銀が、平時の金融政策に向けた取り組みをさらに進める。
6月14日の金融政策決定会合で、長期金利を低くするため実施してきた国債の購入額を減らすことを決めた。
7月末の次回会合で今後1~2年程度の減額計画を定める。購入額を減らすと、金利が上昇する可能性がある。
日銀は3月会合でマイナス金利政策を解除する一方、長期金利の急騰を避けるため、国債購入は従来の月間6兆円規模を維持してきた。今回の決定で、金利に続いて「量的」にも引き締めに向かうことになる。
物価高の懸念は依然残るものの、春闘で賃上げが広がり、経済活動も堅調だ。金融政策が長きにわたった危機対応から脱するのは当然の流れだ。
ただし「金利のある世界」が行き過ぎて景気を冷え込ませるようでは元も子もない。日銀は市場の混乱を招かぬように減額計画を練り上げ、丁寧に政策を運営しなければならない。
植田和男総裁は決定会合後の会見で、「市場で長期金利がより自由な形で形成されるよう減額を決定した」と説明した。
異次元緩和で日銀が大量に国債を購入した結果、国債市場での適正な金利水準が分かりにくくなった。購入の減額を進める中で、市場機能を着実に回復させていく必要がある。
植田総裁は買い入れの減額について「相応の規模になる」と語った。7月会合では減額規模のほか、そのペースなども適切に具体化すべきだ。
日銀の保有国債残高は約600兆円である。いずれは購入をゼロにし、さらには売却に向かう局面も訪れよう。市場関係者の意見にも耳を傾け、その道筋を明確に示してもらいたい。
国債市場とともに注視したいのが為替市場である。日銀の金融政策は為替に影響を及ぼすことを目的としていないが、日米の金利差が円安の要因となっている。購入減額で金利が上昇し円高につながるかどうかだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は12日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、年内に3回としていた利下げ予想を1回にした。米国の利下げが遠のけば円安傾向が長引く可能性もあろう。それが日本経済全体に及ぼす影響についても、日銀は十分に見極めなくてはならない。
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2024年6月15日付産経新聞【主張】を転載しています