20240313 Shunto Spring Struggle 001

Responses to spring labor offensive wage demands are recorded on a whiteboard at the Tokyo offices of the Japan Council of Metalworkers' Unions on March 13. (© Kyodo)

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デフレからの完全脱却に向け、春闘で過去最高水準の賃上げを回答する大手企業が相次いでいる。

 

自動車や電機などの主要企業の回答が3月13日に一斉に行われ、トヨタ自動車をはじめ多くの企業が労組の要求に対して満額を回答した。集中回答日を待たずに満額回答する企業も多く、流通や外食などの業界ではパートなど非正規社員の時給を増やす動きも広がっている。

 

大手では満額回答にとどまらず、労組の要求を上回る賃上げを回答した企業もある。労組の要求水準には課題を残したともいえるが、幅広い労働者に報いようとする経営側の積極的な姿勢を歓迎する。この流れを今後、労使交渉が本格化する中小企業にも波及させたい。

 

政労使会議に臨む(右2人目から)経団連の十倉雅和会長、連合の芳野友子会長ら=3月13日午後、首相官邸(共同)

 

昨年の平均賃上げ率は30年ぶりとなる高い水準を記録した。それでも歴史的な物価上昇に追いつかず、物価変動を加味した実質賃金は前年割れが続く。

 

こうした中で迎えた今春闘で、連合は「5%以上」という賃上げ目標を掲げた。経団連の十倉雅和会長も「物価上昇に負けない賃金引き上げを目指すことが経団連、企業の社会的責務だ」と応じ、労使とも昨年を上回る賃上げを実現する必要性を共有していた。

 

問題は中小企業だ。物価上昇を上回る賃上げによって、「賃上げと成長の好循環」を社会全体で実現するには、雇用の7割を占める中小企業にも波及させることが欠かせない。

 

政労使会議で発言する岸田首相(左から2人目)=3月13日午後、首相官邸(共同)

 

全国商工会連合会によると、3割弱の中小企業が取引価格にコスト上昇分をまったく転嫁できていない。中小企業が賃上げを進めるには、原燃料費などの上昇分を適正に転嫁することが必要になる。

 

物価上昇を上回る賃上げを社会全体に広げていかなければ、家計の負担は軽減されず、自律的な経済成長も期待できまい。大手企業の経営者は自社の賃上げにとどまらず、取引条件の見直しなどを通じて、中小企業が持続的に賃上げできるよう目配りしてもらいたい。

 

13日には岸田文雄首相と経済界、労働界のトップが参加する政労使会議も開かれ、取引適正化に向け独占禁止法や下請法を厳格に執行していくことを確認した。賃上げの流れを途切れさせないために、政労使の緊密な連携が今後も重要になる。

 

 

2024年3月14日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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