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慰安婦問題を扱った著書『帝国の慰安婦』の記述をめぐり、元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損(きそん)罪に問われた韓国・世宗大の朴裕河名誉教授に対する差し戻し審で、ソウル高裁は無罪判決を言い渡した。
表現の自由を守る妥当な判断である。朴氏は判決後、「私の裁判がこれ以上、政治利用されないことを願う」と語った。
『帝国の慰安婦』は慰安婦問題を人権侵害と定義する一方、朝鮮人業者が介在しており、「日本軍による強制連行」を強調するのは実態と異なるなどと論じた学術書だ。日本語にも訳され、日韓の認識の差を縮める試みとして評価された。
ところが慰安婦について「日本軍と同志的関係にあった」などとする同書の記述が名誉毀損にあたるとして元慰安婦らから刑事告訴され、韓国検察が朴氏を同罪で在宅起訴した。
司法判断は揺れた。1審は無罪で、控訴審は有罪(罰金刑)だった。有罪判決では、表現の自由が萎縮しないよう「罰金」にとどめたとしたが、言い訳じみており無理がある。客観的事実に基づく言論に刑事責任を問うこと自体、不当だった。
韓国最高裁は昨年10月、学問における名誉毀損の認定は必要最小限にとどめるべきだとして有罪判決を破棄し、無罪の趣旨で差し戻していた。ソウル高裁も今回、問題となった記述はいずれも「学問的主張、意見の表明」にとどまり、虚偽事実の記載にはあたらないとした。
この当たり前の判断を示すのに告訴から約10年かかったことは、日本をめぐる歴史問題で自由な言論が封じられた韓国の異様さを物語る。
事実に基づく冷静な議論がなければ、日韓関係を損なうばかりだと銘記したい。
判決は慰安婦の日本軍による「強制連行」説が虚偽だと言及したわけではない。韓国では今も強制連行説の噓がまかり通っている。
強制連行説は「軍命令により韓国・済州島で女性を強制連行した」などとした吉田清治氏の虚偽証言を、朝日新聞をはじめとする日本のメディアが報じたのが発端だ。朝日新聞はその後、吉田証言は虚偽だったとして記事を取り消し謝罪した。
日本側からの史実に基づく情報発信が重要である。
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2024年4月18日付産経新聞【主張】を転載しています