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東芝の株主総会で、永山治取締役会議長の再任案が否決された。
3月の臨時総会で選任された調査人が、昨年の株主総会の運営が公正ではなかったとの報告書をまとめたことを受け、議長の永山氏にも責任があると判断した株主が反対票を投じた。
「物言う株主」など海外の投資ファンド勢と、経営陣の対立の結果である。企業統治の確立に意欲を見せてきた永山氏が降板を余儀なくされたことで、同社の経営が再び迷走する事態も懸念される。新経営陣には混乱を早期に収拾する責任がある。
混乱が長引けば、東芝の企業価値も低下する。それは株主にとっても決して利益とはならない。
今月10日に外部の調査人が公表した調査報告書は、昨年の株主総会で東芝経営陣と経済産業省が一体となり、「株主の権利行使を事実上妨げることを画策した」と指摘した。
経営側もこれを認めて謝罪し、経産省と協議した役員らの選任案を取り下げたが、株主の投資ファンドなどは永山氏への批判を強めていた。
永山氏は取締役会議長だけでなく、役員人事を決める指名委員会委員長も務めていた。総会では監査委員会委員だった小林伸行氏の再任案も認められなかった。企業統治で重要な役割を担う2人の再任否決は、株主との深刻な対立を浮き彫りにしたといえる。
昨年の株主総会時に社長を務めていた車谷暢昭氏は、英投資ファンドによる買収提案に関与した疑いが指摘され、4月に辞任したばかりである。その辞任を主導したのが永山氏だった。
総会で再任された綱川智社長は海外株主との対立に終止符を打ち、目を覆うばかりの混乱に歯止めをかける責務を負う。
綱川氏は同時に、東芝の企業価値の維持・向上にも努める必要がある。同社は原発や防衛関連など多様な技術を保有しており、日本の経済安全保障に深く関係する企業でもある。株主の圧力に屈し、安易な事業の切り売りなどに走ってはならない。
同社は改めて株主総会を開き、新たに取締役などを選任する見通しだ。そこでは株主の協力が欠かせない。
新経営陣は株主との信頼関係を早期に回復し、新たな企業統治の姿を見せてほしい。
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2021年6月26日付産経新聞【主張】を転載しています