G20

Commuters walk past a banner with Indian Prime Minister's Narendra Modi photograph welcoming delegates of G20 foreign ministers meeting, in New Delhi, India, Wednesday, March 1, 2023. Fractured East-West relations over Russia's war in Ukraine and increasing concerns about China's global aspirations are set to dominate what is expected to be a highly contentious meeting of foreign ministers from the world's largest industrialized and developing nations this week in India. (© AP / Manish Swarup)

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林芳正外相がインドで3月1日から2日間の日程で開かれた20カ国・地域(G20)外相会合への出席を見送り、令和5年度予算案の国会審議を優先した。林氏の代わりは山田賢司副大臣である。

 

政府と国会の見識を疑う。ロシアや中国などの専制国家の振る舞いが国際情勢を極めて緊迫化させている中での国際会議だ。

 

にもかかわらず、外交を担う閣僚が国会審議を優先し、そうした会議を欠席するとは驚きだ。国益を損ねる判断というほかない。

 

G20
参院予算委に臨む林芳正外相=3月1日午後、参院第1委員会室(矢島康弘撮影)

 

国会は1日、参院予算委員会で岸田文雄首相と全閣僚の出席が原則の基本的質疑を開いた。政府は、予算審議の優先を求めた参院自民党と立憲民主党の意向を踏まえ、林氏の出席を見送った。

 

松野博一官房長官は記者会見で「林氏が出席する可能性を追求したが、国会を含む国内での公務の日程、内容などを総合的に勘案した」と釈明した。全く理解に苦しむ。政府は国会に対し、もっと強く説得すべきだった。

 

G20
3月2日、ニューデリーで開かれた20カ国・地域(G20)外相会合で、ビデオメッセージを読み上げるモディ首相を映し出す大型モニター(ロイター)

 

G20の枠組みでは先の財務相・中央銀行総裁会議で、ロシアのウクライナ侵略を巡って、中露両国と先進7カ国(G7)各国などとの意見対立が鮮明になったばかりである。日本は今年のG7首脳会議(サミット)議長国としてG20での議論を主導すべき立場だ。

 

しかもG20は、対露関係で米欧と距離を置くインドネシアや南アフリカなどの「中間国」も構成国である。

 

ロシアの侵略を即刻中止させるには、中間国が多い「グローバルサウス」(南半球を中心とする途上国)を積極的に取り込み、広範な対露包囲網を形成することが重要だ。

 

その際には、伝統的にロシアと友好関係にあるインドとの連携も欠かせない。その意味でインドで開催される今回のG20は、日本の立場を主張し、対露包囲網を呼び掛ける絶好の機会だった。それを自ら逸してしまった政府と国会の判断は、世界に対する責任を果たさないものだといえよう。

 

これまで岸田首相は「5月のG7広島サミットを成功させ、その成果を9月のG20サミットにつなげ、アジアから世界の平和と繁栄の新しい秩序を主導する」と繰り返し語ってきた。だが、林氏の欠席はインドとの連携にも水を差しかねない。首相と林氏の見識も問われる事態である。

 

 

2023年3月2日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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