米イラン両国の対立から、中東情勢は強い緊張をはらんだまま推移している。そのような情勢だからこそ、自衛隊の中東派遣の必要性は高まっている。
河野太郎防衛相が1月10日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機に対し、派遣命令を出した。日本関係の民間船舶の安全を守る上で当然の命令だ。
派遣部隊は、タンカーなど日本関係船舶の安全航行を確保するための情報収集を行う。不測の事態が起きれば、海上警備行動の発令によって、日本関係船舶の保護に当たる。哨戒機は11日に日本を出発し、20日から活動を始める。護衛艦は準備を続け、2月2日の出航を予定している。
日本は原油輸入の約9割を中東に依存している。それが滞れば、日本の経済と国民の暮らしは立ち行かなくなる。派遣部隊の隊員は胸を張って出発し、重要な任務を遂行してほしい。
安倍晋三首相は11~15日の日程で、サウジアラビアなど中東3カ国を訪問、中東地域の緊張緩和に向けた外交努力に加え、自衛隊派遣について説明する。河野防衛相は9日、イランのハタミ国防軍需相と電話で会談し、自衛隊派遣について説明した。
日本関係船舶の航行と派遣部隊の活動には、沿岸国の理解があることが望ましい。政府は引き続き外交努力を重ねるべきだ。
自衛隊の海外派遣は本来、国を挙げて支える必要がある。ところが残念なことに、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の野党4党は、米イラン対立の激化などを理由に派遣に反対している。
危ないから海自派遣に待ったをかけるのは極めておかしい。
多くの日本関係船舶が日々、危険を押して中東海域を航行していることを忘れてはならない。危ない情勢だからこそ、民間船の安全に資するため海自の護衛艦と哨戒機に働いて貰(もら)うのではないか。
派遣部隊が集めた情報は日本の海運業界へ提供される。自衛隊が行くことで、協力関係にある各国の海軍が集めた航行情報も、より詳しいものが入手できる。それらも安全な航行に生かせる。
派遣に反対する野党は、日本関係船舶の安全を外国に頼り切るつもりか。それは、非現実的な一国平和主義の殻に閉じ籠もるに等しい。世界には通用しない無責任な発想は終わりにすべきである。
1月11日付産経新聞【主張】を転載しています