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日本は111の活火山が連なる火山の国である。それぞれの火山について、活動状況や噴火の切迫度などの現状評価が、秋ごろに公表される。
地域住民だけではなく、国民全体が火山に関心を寄せる契機としたい。
活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正に伴い、政府は4月に「火山調査研究推進本部(火山本部)」を文部科学省に設置した。
111の活火山の評価は同本部の火山調査委員会が担い、過去の噴火履歴など基礎的データをもとに災害危険度を評価し、年2回程度のペースで公表する方針だ。
63人の犠牲者を出した岐阜・長野両県にまたがる御嶽山の噴火(平成26年9月)から、今年で10年になる。この惨事を教訓に火山防災のあり方が見直されてきた。昨年6月の活火山法改正もその一環である。
世界有数の火山国でありながら、観測や研究を国が主導する仕組みが日本にはなかった。噴火が起きた際には、火山噴火予知連絡会が火山活動の見通しなどの評価を担ってきたが、気象庁長官の私的諮問機関という位置づけであり、独自予算も調整機能もなかった。
火山本部は、火山観測と研究の「司令塔」となる政府機関であるが、司令塔だけでは組織は機能しない。大きな課題が、観測体制の強化と、研究・観測を担う人材育成である。
噴火と災害の形態は火山ごとに異なる。噴火切迫度や活動見通しを評価するためには、長期間のデータと火山ごとの専門研究者が不可欠である。近年縮小傾向にあった観測体制の強化を図るとともに、長期的な視野で専門家の育成に取り組まなければならない。
火山は数十年、数百年という長い時間軸で活動する。短期的な成果にとらわれずに観測と研究に取り組めるポストと待遇が必要だ。
観測、研究機関と自治体、住民が連携し、地域ぐるみで防災力を高める取り組みも進めたい。こうした連携が人材育成の土壌になる。
明治44年、浅間山に観測所ができた8月26日が、今年から「火山防災の日」になる。噴火を想定した訓練や啓発活動が実施される。火山を知り、火山とともに生きる力を高めたい。
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2024年5月6日付産経新聞【主張】を転載しています