ウイグルや内モンゴル人女性に対する中国政府の迫害に抗議する自治区出身者ら
=3月8日午後、東京都千代田区(主催者提供)
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米国務省が、昨年の世界約200カ国・地域の人権状況をまとめた報告書を発表した。
報告書は、人権や民主主義が脅かされている国・地域としてロシア、ベラルーシ、中国、香港、北朝鮮、ミャンマー、シリア、スーダンなどを挙げた。
政治家や人権活動家、ジャーナリストらが不当に投獄、拷問、殺害されているなどと非難した。
人権問題に国境はない。弾圧に苦しむ人々を救うためには、まず世界が問題の存在を知る必要がある。報告書の意義は大きい。
ロシアは今年2月にウクライナへ大規模侵攻したが、それ以前から、ウクライナ東部で親露派武装勢力の訓練などを続けていたと報告書は指摘した。2014年のクリミア併合が、「人権状況に重大な悪影響を及ぼし続けている」とも記した。
忘れてならないのは、中国における深刻な人権侵害である。ウイグル人などへの弾圧をやめさせなければならない。
報告書は中国について、「新疆ウイグル自治区におけるジェノサイド(集団殺害)と人道に対する罪は継続している」と明記した。100万人以上のウイグル人らが強制収容所に入れられ、「組織的な拷問」「殴打、強姦(ごうかん)、強制不妊手術、薬物の強制投与」が行われたとの証言があるとした。
バチェレ国連人権高等弁務官が5月に新疆ウイグル自治区を訪問する。中国政府は「訪問の目的は双方の交流と協力の促進だ」として、人権をめぐる調査ではないと主張している。
だが、バチェレ氏の訪問は、ウイグル人に対するジェノサイドをやめさせるのが目的だ。中国政府は妨害してはならない。
報告書は、中国の女子テニス選手だった彭帥さんが、中国元副首相から性的関係を強要されたと告白した後、消息不明になった問題も取り上げた。
北朝鮮をめぐっては、政府が恣意(しい)的な逮捕・殺害、拷問、公開処刑をしていると指摘した。日本人らの拉致問題も取り上げ、北朝鮮を批判した。
米国は、制裁も駆使して人権問題に取り組む方針だ。日本も傍観は許されない。岸田文雄政権は国際人権問題担当の首相補佐官を設けた以上、中国などの人権状況の独自調査に乗り出すべきだ。
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2022年4月17日付産経新聞【主張】を転載しています