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侵略の容認と呼ばずして何と呼ぶべきか。
中国の習近平国家主席がモスクワを訪れてロシアのプーチン大統領と会談したことである。
プーチン氏には17日、ウクライナ侵略をめぐる戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されたばかりである。この時期に臆面もなく訪露し、友好を温めるのだから、呆(あき)れるほかない。
習氏はウクライナ問題で「建設的な役割を果たす」として訪露した。しかし、中国が和平努力と称しているものは欺瞞(ぎまん)に満ちあふれている。中国の立場はとうてい中立的とはいえないからだ。
中国は2月24日に12項目の和平案を出した。一方的な侵略を行っているロシアを全く非難せず、ロシアとウクライナの双方に停戦を呼びかける内容である。
中国の和平案には「一国の安全は他国の犠牲によって追求されてはならない」ともある。北大西洋条約機構(NATO)がロシアを脅かしているとし、ウクライナの非武装化を狙うプーチン政権の主張をなぞるものだ。
中露首脳の共同声明には、ロシアが「中国の公平な立場を評価する」とある。声明は、米欧のウクライナへの軍事支援について、「戦闘を長引かせる行為をやめるべきだ」と要求し、日米欧の対露制裁を念頭に「一方的な制裁に反対する」とした。ロシアの侵略遂行に資する暴論だ。
和平の前提は、露軍がウクライナ領から全面撤退することだ。
中露首脳会談と同じ日に、岸田文雄首相がウクライナを訪れて連帯を示したのは好対照だった。
日本とウクライナの共同声明は、武力による国境線変更を強く非難し、露軍の即時かつ無条件の撤退を求めた。国際社会で中露がいっそう孤立するよう、外交努力を続けなくてはならない。
中国は、米欧が輸入禁止としている露産石油を買い支えるなどしてロシアを支援している。今後、警戒すべきは中国によるロシアへの武器供与である。
ドイツ誌の報道によれば、中国のメーカーは、弾頭を搭載可能なドローン(無人機)の納入について協議している。米国はウクライナの戦場で中国製の弾薬が使われたことを確認した。
これ以上、軍事的支援を続けるなら、日米欧は中国への制裁を発動する必要がある。
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2023年3月23日付産経新聞【主張】を転載しています