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中国の全国人民代表大会(全人代)が閉幕し、3期目の習近平政権が正式に発足した。
首相をはじめ政府の要職に腹心を配した習国家主席は、閉幕式での演説で台湾統一に強い決意を表明した。
権力を集中させ、習氏のひと声ですべてが決まる危険な政権だ。国際社会は一段と警戒を強めなければならない。
首相に就任した李強氏は浙江省勤務時代に、同省トップを務めていた習氏に引き立てられ、スピード出世を果たした。中央での勤務経験がないまま首相の重責を担うのは極めて異例だ。イエスマンの登用が目立った3期目政権を象徴する人事である。
李強氏を知る関係者らは「気配りの人だ」と口を揃(そろ)えるが、厳格な「ゼロコロナ」政策などの影響で疲弊した中国経済を立て直さなければならない非常時のリーダーとして、その手腕は未知数だ。
中国経済の行方は中国のみならず、世界経済に与える影響が大きいだけに座視できない。
中国の経済成長が鈍化する中で目立ったのは国防費のほか、治安維持費の伸びだ。国内の治安維持に充てる「公共安全保障支出」予算は、前年比6・4%増と高い伸び率となった。習政権への批判を徹底的に押さえ込む強権統治が加速する恐れがある。
全人代では、習氏の後継をにらんだ人事が行われなかった。注意したいのは、異例の3期目に突入した習氏が、4期目も視野に入れている可能性が高いことだ。
習氏は演説で「祖国統一のプロセスを確固として推進しなければならない」と強調した。台湾問題を自らの手で解決する意思の表れだろう。長期政権を目指す狙いもそこにあるとみられる。
2期目と違う点は、盟友の王岐山国家副主席の引退が決まり、習氏に意見できる人物がいなくなったことだ。国際社会はこれから約5年間、4期目も含めれば今後約10年間、「裸の王様」を相手にする覚悟が求められる。
軍民融合を掲げる習政権は軍拡路線を邁(まい)進(しん)するとみられる。周囲のイエスマンから正しい情報を得られず、習氏が判断を誤れば、地域の平和と安定は脅かされる。
日本は同盟国や同志国と安全保障協力を深める必要がある。平和を守るため、習政権の暴走を抑えていかなければならない。
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2023年3月15日付産経新聞【主張】を転載しています