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自衛隊が7月1日、発足から70年を迎えた。
国民の大多数が、国防や災害派遣に当たる自衛隊を支持し、頼りにしている。
日本を取り巻く安全保障環境は非常に厳しい。陸海空と内部部局の全ての自衛隊員は国民の期待に応え、日本と世界の平和を守る崇高な任務に邁進(まいしん)してほしい。
警察予備隊、保安隊を経て、自衛隊は昭和29年7月1日に、直接侵略に対する防衛という使命を担って発足した。
戦後の平和が保たれたのは憲法第9条のおかげではない。自衛隊と日米安全保障体制が抑止力となって9条の欠陥を補い、日本の独立と国民の生命を守ってきた。
現憲法には国防に関する直接の規定が存在しない。9条を旗印に自衛隊を違憲と決めつけて排撃したり、自衛隊の活動や充実を妨げようとしたりする「平和運動」が横行する時代が長く続いた。抑止力向上を妨げる似非(えせ)平和運動だったといえる。
逆風にさらされながらも自衛隊と隊員は黙々と訓練や防衛力整備に当たってきた。防衛出動が発令されたことはないが、厳しい任務や訓練で、前身の警察予備隊(昭和25年8月発足)からを含め、2千人以上の隊員が殉職している。その御霊(みたま)に哀悼の誠を捧(ささ)げたい。逆風の時代を含め過去に隊員として国防を担った人々にも感謝したい。
古希を迎えた自衛隊は侵略者と戦うことになるかもしれないという環境にある。これは東西冷戦期以来の事態だ。台湾有事や朝鮮半島有事、周辺国からのミサイル攻撃などに伴う有事の恐れが高まっているからだ。
ウクライナの戦場ではドローン(無人機)の活用が急速に進んでいる。サイバー、宇宙、電磁波など新領域での備えの必要性も叫ばれている。軍事は文字通り日進月歩の世界だ。自衛隊は有事に後れをとらないよう万全を尽くす義務がある。
日本は、軍拡を進め核保有する専制国家の中国、北朝鮮、ロシアに囲まれている。そこで岸田文雄政権は防衛力の抜本的強化を進めている。それには法整備や憲法改正も含め国民の一層の理解と支持が求められる。
戦う態勢を整えた方が、抑止力を高め平和を保てる、もし有事になっても侵略者を撃退できる―という安全保障の逆説を忘れてはならない。
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2024年7月2日付産経新聞【主張】を転載しています