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戦時中に長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)で強制労働させられた証拠として、韓国内で利用されてきたNHK番組の映像が、戦後に撮影されたものだと判明した。
軍艦島で朝鮮半島出身者の強制労働があったという事実はない。関係者の証言などでそれは明確なのに、韓国内ではこの史実が捻(ね)じ曲げられてきた。
戦後の撮影だったことは韓国内の主張の一端が崩れたことを意味する。不当な言いがかりを正す論拠として日韓で周知すべきだ。
番組は、昭和30年11月17日放送の「緑なき島」である。端島の人々を扱った約20分の短編映画として放送された。NHK幹部は19日の自民党会合で、坑内とされる映像の撮影に使われたフィルムは放送と同じ30年製だと説明した。
納得できないのはNHKの対応だ。本来はこの事実を自らのニュースなどで知らせるべきなのに、その姿勢が一向にみえない。
NHKは既に2年前、この事実を盛り込んだ調査報告書を端島の旧島民らでつくる「島民の会」には送付した。今回の自民党への報告は非公開だ。これで幕引きというのなら不誠実だ。早急に検証番組を放送すべきである。
NHKから2010年に映像提供を受けた韓国放送公社KBSは同年8月、「歴史スペシャル 地獄の島 軍艦島」を放送した。20年には国立日帝強制動員歴史館がKBS番組の短縮版を上映したほか、韓国テレビ局MBCでもNHKの映像が使われている。
NHKは本紙の取材に「KBSに対しては、これまでに2回、歴史館やMBCに映像を提供していないかの事実確認と、目的外使用や外部提供しないよう徹底を求める申し入れを行っている」と回答したが、韓国側の対応も含めて詳細を明らかにすべきである。
NHK映像は時期だけでなく撮影場所も、旧島民らが「端島炭坑ではない」と疑問視している。NHKは端島炭坑以外だという結論には至らなかったとしているが、さらに調査を徹底してほしい。
軍艦島は15年、明治日本の産業革命遺産として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。この過程で韓国側は強制労働批判の言いがかりをつけた。韓国内では事実無視の「軍艦島」という反日映画も上映された。日本政府は事実に基づく厳しい反論を怠ってはならない。
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2023年6月28日付産経新聞【主張】を転載しています