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米ワシントンで相次いで開かれた各国財務相らの会合で、急速に進んでいる円安ドル高が議論された。
日米韓の枠組みで初めて開催した財務相会合では円とウォンの下落に対する日韓の「深刻な懸念」を共同声明に明記した。先進7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)でも金融環境の変化がもたらす悪影響への懸念が出た。
現在の為替相場はドル独歩高の様相を呈し、円に限らず多くの通貨が下落している。放置すれば、世界経済を揺るがす大きなリスクとなりかねない。
一連の会合で抜本的な打開策を示せたわけではない。それでも行き過ぎた相場の動きを牽制(けんせい)する上で、各国が懸念を共有することには意味がある。日本は今後も各国の結束が強まるよう促し、懸念に対処すべきだ。
急速な円安ドル高で輸入品の値段が上がり、物価高が再び加速する事態となれば、賃上げ効果を打ち消し、景気に冷や水を浴びせかねない。韓国経済も為替変動の影響を受けやすい。
その日韓両国が、米国を含む3カ国声明で「深刻な懸念」を盛り込んだのは評価できる。G7財務相・中央銀行総裁会議でも、過度の為替変動などが経済や金融の安定に悪影響を与えるという従来合意を確認した。これらは、日本が米国の理解を得ながら円安に対応するための布石となろう。
そもそもドル高の背景にあるのは米国の高い金利だ。米経済が堅調さを保ち、利下げ開始時期が遠のくという観測が強まったことがドル高を助長した。
G20財務相・中央銀行総裁会議では、ドル高に伴う自国通貨安に直面する新興国側から、高金利の米国への資金流出やドル建て債務の膨張を懸念する声が上がった。米国は、為替変動の悪影響が世界に広がれば、自国経済にも跳ね返りかねないことを認識しておく必要がある。
日本政府は、過度の円安には円買いドル売りの為替介入も辞さない構えをみせており、一連の会合を踏まえつつ、介入の是非を判断することになる。
欧米は元来、相場を人為的に動かす介入に否定的だ。G20議長国ブラジルの中央銀行総裁も会見で、介入すれば「経済に歪(ゆが)みが生じる」と語った。そうした中で日本がどう判断するかである。過度な円安を是正する効果的な行動が求められる。
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2024年4月21日付産経新聞【主張】を転載しています