スリランカで、教会やホテルなどを標的とする連続爆破テロがあり、多数が死傷した。
大半は自爆とみられ、キリスト教の復活祭(イースター)を祝っていた信者や、休日を楽しんでいた外国人らが犠牲になった。現地在住の日本人女性も亡くなった。
スリランカ政府、国民のみならず、国際社会の動揺を狙った無差別殺人である。卑劣なテロは絶対に許せない。
安倍晋三首相は「日本はスリランカ、国際社会と手を携えて断固としてテロと戦っていく決意だ」と述べ、連帯を表明した。
綿密に計画、準備され、複数が連携して行動した大がかりな犯行である。テロ組織の摘発を進め、早期に治安を回復してほしい。
スリランカでは、1980年代前半から少数派タミル人がシンハラ人主導の政府に反発し内戦となり、タミル人の組織による爆破テロが頻発した時期もあった。
だが、2009年の内戦終結以降、治安が安定して観光客が増え、経済も上向いている。この流れを止めないためにも、テロに屈することがあってはなるまい。
懸念されるのは、キリスト教会に対する攻撃が、宗教や民族の分断への引き金となることだ。分断に伴う混乱こそ、テロリストの狙いと認識すべきである。
スリランカの人口の7割を仏教徒が占め、ヒンズー教徒は13%、イスラム教徒は10%、キリスト教徒は7%である。昨年3月には、仏教徒とイスラム教徒との衝突で非常事態宣言も出された。
3月にニュージーランドで、モスク(イスラム教礼拝所)襲撃テロが起きた際、同国政府は宗教・民族による対立回避を呼びかけたが、適切な対応といえる。
自爆はイスラム過激派の特徴的な攻撃手法であり、当局もそうした組織の犯行とみている。
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)は、支配地を失ったが、消滅したわけではない。ISの過激思想や、場合によっては戦闘員らがアジアを中心に拡散しているとみるべきであり、東京五輪を控える日本国内を含め、不断の警戒が必要だ。
スリランカの治安対策が不十分なら積極的に支援せねばならない。大阪で開催する20カ国・地域(G20)首脳会議など、さまざまな場を利用し、対テロでの国際結束を主導したい。