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起こるべくして起きた事故といえるだろう。
7月6日未明、大阪市西区北堀江の市道交差点で、電動キックボードとトラックが出合い頭に衝突した。大阪府警によると、電動ボード側に一時停止の道路標示があった。
幸い、けが人はなかったが、電動ボードを運転していた33歳の男性からは基準値を超えるアルコールが検出された。ヘルメットは装着していなかったもようだ。
電動ボードについては、7月1日に施行された改正道路交通法で大きくルールが変わったばかりだ。そもそも新たな規則について、周知は徹底されているか。
改正道交法では最高時速20キロ以下、長さ190センチ以下などの要件を満たす電動ボードを「特定小型原動機付き自転車」と分類し、16歳未満は運転禁止でヘルメットの着用は努力義務などとなった。運転免許は不要だが、酒気帯びを含む交通違反は反則切符の対象となる。原則は車道の左端通行だが、最高時速を6キロ以下に設定し、緑色のランプを点滅させれば歩道の通行も可能だ。
こうした複雑なルールを利用者だけではなく、一般車両や歩行者にも周知しなければならない。
適用ルールはおおむね自転車と同様となるが、その自転車さえ、道交法上の扱いが周知されているとはいえない。歩道を歩行中、自転車にベル(警音器)を鳴らされたことはないか。歩道上は歩行者優先であり、これをどかすような行為は道交法違反である。
電動ボードは16歳以上なら免許不要で運転できる。それは高齢者にとっても同様だ。車輪が小さく安定性に欠け、ヘルメットの装着義務もない電動ボードの走行は、車道では一般車両の、歩道では歩行者の新たな脅威となり得る。
車道から歩道へ、歩道から車道へと好き放題に駆け抜ける自転車走行の現状をみれば、電動ボードの最高時速の切り替えがスムーズに行われるか、大いに不安だ。
警察庁によると、電動ボードの人身事故は令和2年1月から今年5月に14都府県で88件発生し、91人が負傷した。昨年9月には東京都内で、酒気帯び運転で転倒した男性が死亡する事故があった。
電動ボードは利便性に富み、環境にもやさしい。観光客へのレンタル事業にも期待は大きいが、それもこれも、安心安全が確保された上でのものである。
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2023年7月8日付産経新聞【主張】を転載しています