外務省に入るロシアのガルージン駐日大使(右)
=3月22日午後
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ロシアの極東開発を担当するトルトネフ副首相が、北方領土について、独自の開発や投資を進めることで「ロシアのものにする」と語った。暴言であり容認できない。
日本政府は令和4年版外交青書で、北方領土は「日本固有の領土」で、「ロシアに不法占拠されている」との表現を復活させた。これらは国際法上も、歴史上も正当である。
トルトネフ副首相は日本の外交青書に対し「ロシアの返答は単純だ」と述べ、独自開発などに言及した。日本が北方領土をめぐり、プーチン政権への気兼ねをやめて本当のことを唱えだしたり、ウクライナ侵略を理由に制裁を科したりしていることへの焦りと反発があるのだろう。
日米欧の制裁でロシアは厳しい経済状況にある。プーチン政権が北方領土の独自開発を唱えたところでうまくいくはずもなく滑稽だ。脅しにもならない。
ただし、日本固有の領土である北方四島を「ロシアのもの」とみなして経済活動をすることは微塵(みじん)も許されない。
松野博一官房長官は26日の記者会見で、トルトネフ副首相の発言について、「あたかも北方四島がロシアの領土となったかのようなロシア側の主張は全く受け入れられない」と語った。
ならば政府は対露制裁をさらに強化すべきである。ロシアのウクライナ侵略と、旧ソ連・ロシアによる北方領土不法占拠は、どちらも「力による現状変更」であって認められない。
政府は先にウクライナ侵略を理由に駐日ロシア大使館の外交官ら8人を追放した。今回のトルトネフ副首相の発言は日本の主権、領土を著しく侵害するものだ。政府はガルージン駐日大使を含め、さらなる追放に踏み切るべきだ。
プーチン政権は北方四島などに進出する国内外の企業を税制優遇する法律を制定した。岸田政権は北方四島で経済活動に従事する企業とその関係者には、日本入国や日本企業との取引を禁ずる措置を講じてもらいたい。
ロシア産の石油、天然ガスの輸入を停止し、プーチン政権の手にウクライナ侵略の戦費、北方四島開発の資金が渡らないようにしたい。萩生田光一経済産業相が兼務する「ロシア経済分野協力担当相」という無用のポストも、直ちに廃止しなければならない。
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2022年4月27日付産経新聞【主張】を転載しています