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東京・九段の靖国神社の「社号標」という石柱に、英語で「トイレ」と落書きされる事件が起きた。中国の動画投稿アプリで、男が石柱に向かって放尿するようなしぐさをし、赤いスプレーで落書きする犯行の様子が投稿されていた。
警視庁公安部が器物損壊容疑で捜査している。容疑者は上海在住とみられる中国籍の男で、撮影役と一緒に中国に向けて出国したという。
靖国神社は246万余柱の英霊が眠る近現代日本の戦没者追悼の中心施設である。極めて下品な犯行で冒瀆(ぼうとく)したことは絶対に容認できない。
警視庁は容疑者を急ぎ特定してもらいたい。岸田文雄首相と上川陽子外相は最大限の憤りを表明し、中国側に容疑者の引き渡しを求めるべきだ。
落書きは1日早朝、通行人が発見して警察に通報した。犯行の動画が投稿されたことからも計画的な仕業とみられる。
中国のSNSでは「とても美しい」「よくやった」と称賛する声が上がったというから呆(あき)れる。靖国神社を批判的にとらえるとしても、今回のような犯行が許されるはずもない。
日本には多くの中国人がいるが、その大多数は今回のような愚かな行為をしていない。下品な犯行やそれを礼賛する投稿が中国人のイメージ悪化を招くことがなぜ分からないのか。
中国外務省の報道官は記者会見で今回の事件をめぐり、「外国にいる中国公民は現地の法律を順守し、理性的に訴えを表現するよう注意を促したい」と述べた。よくないことだったと考えてはいるようだが、注意喚起だけで済む話ではない。
日本と中国は犯罪人引き渡し条約を結んではいないが事は重大である。中国政府は日本側の捜査に協力し、容疑者を拘束して引き渡してもらいたい。
報道官は同じ会見で靖国神社を「日本軍国主義が発動した精神的な道具であり象徴だ」と批判した。だが参拝者は静謐(せいひつ)な環境で英霊を悼み、平和への誓いを新たにしている。中国側の長年の反日教育が事件の容疑者の靖国神社への憎悪をかき立てたのではないかと恐れる。
靖国神社では過去にも中国人、韓国人らによる放火や落書きなどの事件があった。英霊の静かな眠りを守るため警察が警備を厳重にすべき時である。
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20204年6月5日付産経新聞【主張】を転載しています