COP27

SMR power plant (rendering) for New Scale Power Co Ltd (photo by JGC Holdings)

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高い安全性や経済性などを持つ次世代の革新的原子炉(革新炉)の開発について、実用化までの工程表が経済産業省によって作成された。

 

ビジョンの概略を示す骨子案の形だが、今後の詳細の積み上げを通じて日本の電力産業の脱炭素化と安定供給を可能にする革新炉開発への道を切り開いてもらいたい。

 

日本の原子力発電は、東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、停滞が続いている。その間に脱炭素社会の構築が国際社会の潮流となり、海外では二酸化炭素を排出しない原発に対する肯定的評価が復活した。

 

フランスでは計14基の原発新設が検討され、英国でも原発比率の拡大が計画されている。

 

また、工場で製造したユニットを現場で組み立てる小型モジュール炉(SMR)の開発には、米国やカナダなども積極姿勢を見せており、日本がこれまでのような足踏みを続ければ、次世代原発の開発レースから取り残されよう。

 

現在、世界で建設・計画中の加圧水型原発の約6割を中露製が占め、原子力分野における日本の存在感は薄れつつある。

 

研究開発の活性化には、若手の研究者と技術者の参入が欠かせない。革新炉の開発は、若い世代にとって魅力に富んだ知の挑戦分野となるはずだ。

 

今回、工程表で示された革新炉には革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉が含まれる。とくに注目したいのは原理上、炉心溶融事故とは無縁で、発電しながら水素製造ができる高温ガス炉だ。

 

日本原子力研究開発機構の高温ガス炉「HTTR」(実験炉)は、世界の開発レースの先頭に立っている。水の代わりにヘリウムガスを使うので砂漠にも立地可能で、しかもSMRの一種だ。

 

工程表では実証炉としての高温ガス炉の運転開始は2030年代となっており、既存炉の安全性を高めた革新軽水炉の実用炉と並んでいる。

 

電力の7割以上を火力発電に依存している日本は、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー安全保障の脆弱(ぜいじゃく)さを自覚させられた。

 

岸田文雄首相は、先日の会合で既存の原発の再稼働とその先の展開策を示すよう求めている。

 

革新炉開発の工程表こそ、まさしくその回答そのものだろう。

 

 

2022年8月9日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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