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中国の王毅国務委員兼外相と韓国の朴振外相が中国・青島で会談し、両国の協力関係の発展を確認した。朴氏は、習近平国家主席の韓国訪問への期待も伝えたという。いったいどこを向いて外交をやっているのか。
今年は中韓国交正常化30年にあたる。だが、今は北朝鮮や中国を相手に日米韓が結束しなければならない時である。中国と友好を語るのにふさわしいタイミングではあるまい。二股外交をやっていては、中国に足元をみられるだけだ。
誤ったシグナルを与えないためにも、韓国は中国との距離を慎重に測るべきだ。
米国のペロシ下院議長が今月初めに台湾を訪問したことに激しく反発した中国は、台湾周辺で連日、大規模な軍事演習を行った。日本の排他的経済水域(EEZ)内にも弾道ミサイルを撃ち込み、地域の緊張を高めてきた。
こうした時期に中国が韓国と外相会談を行ったのは、日米韓の結束にクサビを打ち込む狙いがあるのは明らかである。
ペロシ氏の訪台に積極的な支持をみせなかった韓国の融和的な姿勢を中国は好機と捉え、米国主導の対中包囲網から韓国を切り離す思惑があったのだろう。
韓国も、それは承知のはずである。「世界が専制主義か民主主義かの選択を迫られる」(ペロシ氏)中で、韓国は中国の分断工作を受け入れるべきではない。
会談で王氏は「未来の30年に向け、中韓は独立自主を堅持し、外部からの妨げや影響を受けてはならない」と述べた。外部がバイデン米政権を指すのは明らかだ。
中国は、さきに予定されていた林芳正外相との会談を直前にキャンセルした。中国が日韓への対応に差をつけたのは、ペロシ氏への接遇の違いにある。
日本は岸田文雄首相がペロシ氏と会談し、台湾海峡の平和と安定維持のため、緊密に連携していくことを確認した。一方で韓国の尹錫悦大統領は夏季休暇を理由にペロシ氏との会談を電話で済ませた。ソウルにいながら対面しなかったことに、韓国内外で失望する意見が相次いだのは当然だ。
尹氏は、文前政権の親中外交で崩れた韓米、日韓関係の正常化を強く訴えてきた。米中の二兎を追う外交は成立しないことを、尹氏は知っているはずだ。中国に秋波を送っている場合ではない。
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2022年8月13日付産経新聞【主張】を転載しています