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岸田文雄首相が衆院本会議で米国訪問に関する報告を行った。
日米首脳会談では両国を「グローバル・パートナー」と位置付け防衛・安全保障、経済安保、先端技術など幅広い分野で連携強化することで合意した。
抑止の努力を怠れば日本有事につながる台湾有事が起きかねないという厳しい安保情勢への危機感を反映している。日米同盟の抑止力・対処力向上の具体的方策で合意した首相訪米の成果は大きい。
残念だったのは、日米合意の背景をなす現下の安保環境への危機認識を、本会議ではきちんと伝えなかった点だ。
首相は報告で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を何としても維持・強化する」と述べた。だが、それを訴えなければならない最大の理由となっている中国についてほとんど触れなかった。
力による一方的な現状変更の試みを否定する文脈で、「中国をめぐる諸課題への対応」と言及したにとどまった。共同声明に記した「台湾海峡の平和と安定を維持する重要性」という言葉も報告で述べなかった。
米議会演説で語った、中国は日本だけでなく国際社会の平和と安定にとっても「これまでにない最大の戦略的な挑戦だ」との認識も語らなかった。
さらに、南シナ海の沿岸国で台湾の南に位置するフィリピンと日米の首脳会談にも触れなかった。これでは国会で拍手をしてもらえるはずがない。
首相はもっと中国の脅威について正直に訴えるべきだ。
質疑で立憲民主党の源馬謙太郎氏は、日米関係が強固であることを確認した点を評価し、日本も国際社会の平和と安定に寄与することが重要との認識を示した。その通りだが、立民は集団的自衛権の限定行使すら認めていない。こうした姿勢を改めない限り政権は担えまい。
共産党の志位和夫議長は、自衛隊と米軍の指揮・統制見直しについて「自衛隊が参戦する道を開くことになる」と批判した。抑止力の強化を否定するもので、共産の主張では平和を守れない。
自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党は訪米を評価した。国民民主の玉木雄一郎代表が、能動的サイバー防御関連の法案が未提出であることを問題視したのはもっともである。
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2024年4月19日付産経新聞【主張】を転載しています