7月2日に発生した通信障害についての会見をするKDDIの高橋誠社長
=7月3日午前、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)
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通信大手のKDDIが起こした大規模な通信障害は、発生から2日以上が経過しても全面復旧に至らず、社会生活に深刻な影響を与えた。
生活や産業を支える基幹インフラを担う事業者としての自覚が厳しく問われる事態である。
通信障害により、警察や消防などへの緊急通報が長時間にわたってつながらなくなった。社会のデジタル化が進む中で、データ通信を使った多様なサービスも利用不能となった。通信に依存する社会のもろさが浮き彫りになった格好だ。
それだけにKDDIは、原因を徹底的に解明し、何よりも再発防止に万全を期さねばならない。総務省も早期に重大事故として認定し、事故原因と復旧遅れの検証を急いでもらいたい。
通信障害は同社の主力ブランドの「au」と格安ブランドの「UQモバイル」などを合わせ、最大で3915万回線に影響が及んだ可能性があるという。
2日未明に障害が発生してから長時間がたっても一部通話で混雑が残るなど、その影響は長引いた。KDDIの通信網を利用している公共機関や銀行、気象観測、宅配業者など、障害の影響は多方面に及んだ。
同社は通信設備の定期交換時のトラブルが通信障害の発端としているが、他の通信事業者とも原因をめぐる詳細な情報の共有が欠かせない。
KDDIの高橋誠社長は「インフラを支える事業者として深くおわび申し上げます」と陳謝した。まずは原因究明と再発防止に全力を挙げなければならない。そのうえで経営責任の明確化を含め、個人や法人に対する補償などについても検討を進めてほしい。
大規模な通信障害では、昨年10月にNTTドコモが自販機向けの通信設備の障害を発端として、延べ約1290万人の音声通話やデータ通信が最長29時間にわたって利用できなくなる事案が発生した。総務省は電気通信事業法にもとづく「重大な事故」と認定し、行政指導した。
同省はその際、他の通信事業者に対しても設備交換時に通信障害を発生させないように点検を要請している。今回のKDDIによる通信障害も重大事故として認定されるのは確実だが、改めて通信インフラの保守・点検の徹底に努めなければならない。
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2022年7月5日付産経新聞【主張】を転載しています