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ナポレオン戦争後、200年近く中立を保ってきた北欧のスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟が決まった。
全加盟国の承認が必要だったが、最後に残ったハンガリーの議会が承認した。世界最大の軍事同盟であるNATOの北方拡大が完成し、ロシア本土と大西洋を結ぶ海上交通路(シーレーン)が通るバルト海を包み込むことになった。
スウェーデン加盟を評価したい。32カ国となるNATOは対露抑止力を強化し、欧州、ひいては世界の秩序の安定を図ってもらいたい。ウクライナ支援も極めて重要な課題である。
スウェーデンは、中立国ながら旧ソ連・ロシアの侵略に備え防衛努力を続けてきた国だ。だが、ロシアのウクライナ侵略に直面して安全保障政策の転換を決意し、隣国フィンランドとともに一昨年、集団的自衛権の行使によって守り合うNATOに加盟申請した。
スウェーデンのクリステション首相は加盟決定について「歴史的な日だ。責任を果たす用意がある」と語った。NATOのストルテンベルグ事務総長は「NATOはより強く、より安全になる」と歓迎した。
フィンランドの加盟は昨年4月に実現したが、スウェーデンはトルコとハンガリーが難色を示し、承認が遅れていた。
トルコは非合法組織「クルド労働者党」(PKK)関係者らの取り締まりについて、スウェーデン国内での対応進展を認め1月に承認に踏み切った。
エネルギーのロシア依存が大きいハンガリーもNATO諸国による強い働きかけで承認に転じ、スウェーデン製のグリペン戦闘機の購入で合意した。
11月の米大統領選の有力候補であるトランプ前米大統領は最近、国防費の支出が少ないNATO加盟国を防衛しないと語った。NATOは国防費を国内総生産(GDP)比2%以上にする目標を掲げている。今年はドイツなど18カ国が目標を達成する見通しだ。残る加盟国も国防費の増額など防衛努力を進め、NATOの動揺を防いでもらいたい。
林芳正官房長官は「同志国間の連携が重要になっている観点」からスウェーデンの加盟努力を歓迎した。日本とNATOは地球規模での安保協力を進めてほしい。
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2024年2月28日付産経新聞【主張】を転載しています