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カフェの店頭に「大豆ミート」の文字が躍り、市民権を得つつある代替肉。大豆などを使い肉のような見た目や食感に仕上げたもので、これまでは主に菜食主義の人向けのものだった。しかし今や肉好きな人でも満足感を得られるような商品も登場し、市場は拡大中だ。背景には持続可能な開発目標(SDGs)の浸透による人々の環境意識の高まりがありそうだ。
バンズからはみ出るほどの大きなパテ、あふれ出るチーズ-。写真のホーリーカウチーズバーガー(1298円)はボリュームがあり、一見、おしゃれなカフェで出されるグルメバーガーのよう。だが実は、植物から作られた「プラントベースドミート(PBM)」と呼ばれる代替肉を使ったヘルシーな一品だ。
オランダ発の代替肉ブランド、ベジタリアンブッチャーと国内専売契約を結んだベジタリアンブッチャージャパン(東京)が昨年8月、東京・池袋にレストランをオープン。ハンバーガーを中心に代替肉を使った料理を供している。
ハンバーガーに挟まったパテはビーフのようなしっかりとした食感。原料は大豆がメインというが豆っぽさはほとんど感じられない。同社の村谷幸彦社長は「PBMは(菜食主義の)ヴィーガンやベジタリアンの人向けの商品だったが、肉を食べる一般消費者に向けた商品開発に転換している。店舗で出すメニューも一般の人においしいといってもらえるように開発した」と話す。
食べて環境を学ぶ
ベジタリアンブッチャーは、米国のビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズなどと並び、世界の代替肉市場を牽引(けんいん)している。商品の研究開発は大学などと連携。細胞レベルまで食肉の構造を分析し、代替肉の味や食感を生み出しているという。
「牛肉なら松阪牛というように、ビーフ風はこのブランド、チキン風は…といったすみ分けが世界にできつつある。国内でベジタリアンブッチャーのブランドをしっかり確立していきたい」(村谷社長)
畜産は、大量の飼料とその栽培に伴う大量の水とを消費する。それに比べ、植物由来の代替肉は環境負荷が少なくて済む。レストランでは、食品ロスや環境負荷の低減を目指した取り組みも進め、利用客に環境問題を考えてもらうきっかけづくりも行う。今後は環境問題に敏感な若者を主なターゲットに、PBMの市場拡大を目指すという。
家庭の食卓にも
国内メーカーも代替肉の商品開発に本格的に乗り出している。ニチレイフーズは1日、冷凍食品「大豆ミートのハンバーグ」を発売。代替肉のベンチャー起業「DAIZ」の製品を中心に肉粒の大きさが異なる複数の代替肉を混ぜて使うことで、より肉に近い食感や味わい深さを創出した。
通常は肉由来のエキスが使われるというデミグラスソースを植物由来の食材のみで作るというこだわりも。ニチレイフーズの開発担当者は「今後、間違いなく代替肉は広がっていく。一般の人が期待する水準に仕上げるのは難しかったが、普段、肉を食べている方にも今日はこっちにしてみようと思ってもらえたら」と力を込めた。
味の素も昨年11月末からDAIZに出資し、商品開発に乗り出している。それに先行し、欧米メーカーの研究開発も支援してきた。味の素の担当者は「代替肉は塩分が多くなりがち。われわれが創業以来続けてきたうま味成分を生み出す技術などが役に立つのではないか」と期待感を示した。
筆者:石原颯(産経新聞)