模造 螺鈿箱 一合
[素地]川北良造 [髹漆・加飾]北村大通 [嚫]高田義男
昭和51~52・54年(1976~77・79) 宮内庁正倉院事務所蔵
【全期間展示】
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サントリー美術館で始まったこの展覧会では新鮮な刺激を受ける。「再現模造作品」という言葉、日本人の感覚では、“本物”ではなくコピーした物、言ってみれば“パクリ”イメージがあるが、いやいや素晴らしい模造作品ばかりである。
徹底調査の結果の材料、手法が判明するとそれで再現した作品は、お前が作れと言われたら?勿論「出来ない」と即答するレベル、それぐらい圧倒的で精緻な出来栄えの“模造作品”オンパレードである。
1300年前の日本はこうだったのかを教えてくれる色彩や質感、創作当時のデザイナー、職人、見る人と同じ感覚を共有できる鑑賞である。当然であるが図録の華やかさも見る者に楽しさを加えてくれる。
正倉院の宝物と言ったら古い物、くすんだ色、と当たり前に思っていたが、こんな素敵な“再現模造”活動を進めていてくれた事を初めて知り、1300年後に生きる人間の一人として拍手喝采である。
この再現を考えた人もそうだが、これを現場で再現した技術者の方々、職人という言い方が近いと思うが、その一人一人に尊敬の念を抱く。精緻で丁寧、日本人らしい素晴らしい仕事振りである。
この手法は宝物品だけでなく、全ての物、場所、サービスにも相通じる考えであり、鑑賞者の一人一人が刺激を受け、自分の分野で活かして貰いたいものである。それは結果として「価値あるものの次世代への継承」に繋がる。
アートとはいえ全ての物は時と共に退色、崩壊、地球に帰るものである。この“匠による復元”は、見る人を時空を超えた世界に誘ってくれる。行ける人は美術館に行って確認して欲しいが、ここにある写真でも十分にイメージを膨らます事ができる。
3月27日まで開催中。
御大典記念 特別展 よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―
◆Works from the exhibition
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_1/display.html