ドキュメンタリー映画「希望と絶望 その涙を誰も知らない」の一場面
ⓒ日向坂 46 ドキュメンタリー映画製作委員会
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日向坂46(ひなたざかフォーティーシックス)のドキュメンタリー映画が8日から全国の映画館で上映される。人気女性アイドルグループの躍進をとらえるはずが、撮影開始直後に新型コロナウイルスの感染が拡大。少女たちがコロナ禍の試練を乗り越える記録となった。ファンに限らずコロナ禍で苦しんだ多くの人たちの共感を呼びそうだ。
映画は、東京のテレビ局、TBSで「アッコにおまかせ!」や「輝く!日本レコード大賞」など人気番組を手掛けた竹中優介プロデューサー(45)が監督した。
10年ほど前、AKB48(フォーティーエイト)の番組を担当した際、「10代の若者が夢に向かって一丸となる姿が、高校球児と同じぐらいピュアだ」と魅了され、アイドルを取材したドキュメンタリーの深夜番組を作り始めた。
日向坂46については、撮影現場で丁寧な態度で周囲に接する姿を目撃して関心をもち、ドキュメンタリー映画「3年目のデビュー」(令和2年)を製作することになった。
今回は、その続編で、念願の東京ドーム公演が開かれる2年12月までの約1年を撮影して作品にするはずだった。
だが、コロナ禍がすべての予定を変えた。ドーム公演は延期になった。
「思うように活動ができないもどかしさで不安になりました」と当時を振り返るのは日向坂46の最年少メンバー、上村(かみむら)ひなの(18)。
金村美玖(19)は「自粛期間中、どんどん体力が落ち、活動が再開できるのかとまで考えた」という。
実際、グループでは体調を崩すメンバーが相次ぎ、中心メンバーの小坂菜緒(19)らが活動休止を余儀なくされた。
「コロナに感染したわけではありませんが、コロナによって何らかの歯車が狂い、体調に影響したのでは。この映画は、コロナ禍がどれほど人間の生き方や夢にダメージを与えたかの記録でもあります」と密着取材し、彼女たちを見守っていた竹中監督は語る。
先は見えなかった。だが、竹中監督は撮影をやめなかった。
「苦しみや葛藤だけの映画を作っても救いがない。見てよかったと思えるものにしなくてはならない」
やがて、ライブ活動が再開し、2度延期になった東京ドーム公演も今年3月の開催が決まる。1月には小坂も復帰。「日向坂46が再び一つになれたのは、小坂の復帰が大きかった」(金村)と全22人が一丸となってドーム公演を目指す。だが、開催5日前に1人の新型コロナ陽性が判明。夢舞台には21人で臨むことに…。
波乱の2年間。映画は、メンバーたちの率直な思いをすくいあげる。題名が決まったのは5月末。「希望と絶望 その涙を誰も知らない」だ。メンバーの河田陽菜=かわた・ひな(20)は「その名の通り、きれいな部分だけじゃなく、皆さんの知らない私たちを見ることになります」と話す。
竹中監督は、「あらゆる立場の人たちが、コロナ禍で苦しんだと思います。こうやって乗り越えた人たちがいたという事実を伝えたい」と題名に込めた思いを語る。
筆者:石井健(産経新聞)
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■日向坂46
欅坂46(けやきざかフォーティーシックス)の〝派生グループ〟として平成27年に発足した「けやき坂46」が前身。31年、「日向坂46」に改名し、シングル「キュン」でデビュー。以降、今年6月発売の最新曲「僕なんか」までシングル7枚、アルバム1枚、すべてがオリコンチャートの1位を獲得している。
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映画「希望と絶望 その涙を誰も知らない」は、8日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・シネ・リーブル梅田などで全国順次公開。2時間。