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元国防総省日本部長の知日派論客で日米同盟の強化に長年努めてきた米ヴァンダービルト大学名誉教授のジェームス・E・アワー氏が5月16日、南部テネシー州ナッシュビル市内で死去した。82歳だった。産経新聞の「正論」執筆メンバー。米海軍の日本勤務時代に培った豊富な人脈や学識を生かし、日米安全保障関係の針路に現実的な提言を続けるとともに日米関係を担う人材育成にも尽力した。
アワー氏は1941(昭和16)年、米中西部ミネソタ州出身。マーケット大を卒業し米海軍に入隊。長崎県佐世保市の海軍基地に配属され日本との深い絆の契機となった。海上自衛隊幹部学校に留学。79年から国防総省日本部長を務め、共和党レーガン政権下で日米同盟の強化に奔走した。
その間、タフツ大フレッチャー・スクール(法律外交大学院)で博士号を取得。敗戦後の日本帝国海軍の解体から海上自衛隊創設を経た日本の海上戦力再建の歴史を旧海軍将官らへの取材も交えて調査研究し、その成果を論文にまとめた。後に翻訳され「よみがえる日本海軍」(時事通信社)として出版された。
89年からナッシュビルにあるヴァンダービルト大学教授。同年、正論執筆メンバーとなり、日米安保の深化に向けた積極的提言を続けた。北朝鮮の核ミサイル開発や中国の軍備拡張など東アジア安保環境の激変を見越し、日本に集団的自衛権行使の政治決断を早くから求め続けた。
同大の日米研究協力センター所長として日本人研究者の受け入れや研究会の主催など草の根レベルで日米関係の強化を進めた。2008(平成20)年に旭日中綬章を受章。16年に外国人として初めて正論大賞を受賞した。
筆者:渡辺浩生(産経新聞ワシントン支局長)