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次代のクルマ文化を支える究極のエコカー「MIRAI(ミライ)」。トヨタが世に問う燃料電池自動車(FCV)だ。
水素をエネルギーとして発電し、モーターで走行するため地球温暖化の原因となる二酸化炭素が発生しない。さらに発電に利用した空気は、フィルターで浄化されよりクリーンになる。「ゼロエミッション」を超え、走るほどに環境にやさしい「マイナスエミッション」の領域へ。世界をリードするFCVミライに試乗した。
一口にエコカーといっても種類はさまざま。トヨタのお家芸「ハイブリッド(HV)」を筆頭に、電気自動車(EV)や日産の「e-POWER」もある。
EVやFCVは、ガソリンは使用せず、充電や発電による電気を使ってモーターで走るので、二酸化炭素が発生しない。
エコカーは過渡期にあり、長所と短所がある。HVは充電の心配はないが、ガソリンを使うので、ある程度のCO2を排出する。
エコといわれるEVもクルマの製造時に大量のCO2が発生し、充電する電気も火力発電が由来なら一概にエコとはいえない。30分の充電時間も負担だろう。
究極のエコカーといわれるFCVは800万円近い価格と水素ステーションの少なさがネック。だが、充塡(じゅうてん)時間は数分で、800キロ近い走行距離は魅力だ。
ミライの乗り心地はレクサスなどの高級車に匹敵する上質な仕上がり。
ハンドルの左横にあるスタートボタンを押すとスイッチがオンになる。
アクセルを軽く踏むと滑るように走り出す。防音対策が徹底しているのか、タイヤのロードノイズもほとんど聞こえてこない。
走行フィールは重厚で安定感にあふれる。クルマと道路が一体となって動いている感じだ。
振動や揺れなど、不快な動きとは無縁。あまりにも静かなので、疑似エンジン音をスピーカーで鳴らす、「アクティブサウンドコントロール」という機能もあるが、中途半端な音質で、もう少し臨場感があってもいい。
決して軽いとはいえないクルマだが、カーブでの安定感は群を抜く。重心が低いうえに重量バランスが抜群でレクサスの最高級セダンLSと比べても引けを取らない。
個性的なフロントグリルは賛否が分かれるところ。FCVらしさを出す狙いもあるのだろうが、もう少しシャープな顔つきでもいいような気がする。
FCVは排ガスのかわりに水を排出する。メーカーに飲用できるかと問うと「安全な水ですが、飲用には適していない」という返事をいただいた。
FCVの普及への道のりは平坦ではないだろう。車両価格や水素ステーションの増設など課題は多い。だが、水素は電気以上に環境への負荷が低い。
30年、50年後を見据えればFCVは大きな可能性を秘めている。トラックやバスなど大型車はメリットが多い。〝未来〟に向けたトヨタの努力に期待したい。
■トヨタ ミライ(Z〝Executive Package〟)
定員 5人
全長 4975ミリ
全幅 1885ミリ
全高 1470ミリ
車両重量 1950キロ
モーター 交流同期電動機
定格出力 48キロワット
最高出力 182馬力
燃費(WLTCモード) 135km/kg
車両本体価格 805万円