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年に一度のお祭りを楽しみたいなら、最低限、周囲に迷惑をかけてはならない。
10月末のハロウィーンで、路上飲酒やごみの放置などによるトラブルが年々ひどくなっている。大混雑が予想される東京都渋谷区や新宿区では、路上飲酒を禁止するなどの対策に追われている。
公共の場で、酒に酔って夜通し騒ぐ、大音量で音楽を流す、街路樹などによじ登る。そんな非常識が許されていいはずがない。ハロウィーンで街に繰り出す人々は、マナーを守り、節度を持って行動してほしい。
ハロウィーンは、秋の収穫などを祝う欧州発祥のお祭りだ。日本でも25年ほど前から東京ディズニーランドなどで関連イベントが行われ、渋谷駅前のスクランブル交差点などに仮装の若者たちや外国人グループが集まるようになった。
それとともに混乱やトラブルが増え、平成30年10月には酒に酔った若者らが渋谷のセンター街で軽トラックを横転させ、逮捕者が出る事件も起きた。
外国人観光客らの路上飲酒も深刻だ。海外では、路上など公共の場での飲酒を禁止する国や地域が少なくないが、日本なら騒いでも構わないという誤った情報がSNSなどを通じて広まっているという。
渋谷区は令和元年、ハロウィーン時季や年末年始に渋谷駅周辺で路上飲酒を禁止する条例を制定した。だがトラブルは絶えず、年間を通して夜間の路上飲酒を禁じる改正条例を今年10月に施行した。
新宿区でも今年、10月31日夕から翌日朝まで歌舞伎町周辺での路上飲酒禁止を決めた。
安全な環境を保つため、一定の規制はやむを得まい。両区とも罰則規定はないが、混乱が続くようなら罰則を含む対策強化を検討すべきだろう。
人が密集した場所では、連鎖的に転倒するなどの群衆事故も懸念される。2年前のハロウィーン時季には韓国ソウルの繁華街で人々が折り重なるように倒れ、150人以上が死亡する悲惨な事故も起きた。混雑しそうな場所がある自治体はパトロールの強化にも努めてほしい。
何より求められるのは一人一人のモラルだ。路上で飲酒しないのはもちろん、ごみは持ち帰るのが最低限のマナーだと、誰もが肝に銘じたい。
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2024年10月30日付産経新聞【主張】を転載しています