特別展で展示されてた「狐刀カカルクモナキ」
ゲームから飛び出したようなリアリティー
=堺市堺区の「さかい利晶の杜」
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世界累計販売8400万本のカプコンの人気ゲームシリーズ「モンスターハンター(モンハン)」と堺市のコラボが話題を呼んでいる。同市の職人らがモンハンに登場する武器の実物製作に挑み、構想含め3年がかりで完成させた。同市がカプコンに呼びかけ実現。戦国時代に鉄砲鍛冶が集積し、現在も刃物など金属加工業で高い技術をもつ市の魅力を発信する目的だ。豊かな歴史と観光資源を有しながら浸透度が今ひとつといわれた同市。モンハンは救世主となるか。
全長3・1㍍、重さ150㌔と現実離れした巨大さ。彩り豊かな刀身は迫力満点だ。モンハンに登場する武器で、今回のプロジェクトで製作された「狐刀(ことう)カカルクモナキ」だ。「モンスターハンター×堺 いにしえの技にせまる」と題した特別展が9月4日まで開かれていた堺市堺区の「さかい利晶の杜」には、これを目当てに多くの人が訪れた。
10年来のモンハンファンという大阪市西区の会社員、吉武彬さん(22)「好きなものがリアルに目の前にあるのは楽しい」と笑顔。大阪府貝塚市から訪れた専門学生の男性(20)は「ゲーム内だが、これを振り回すキャラもすごいと実感した」と話した。
企画は平成29年、堺市がカプコンに声をかけ始動した。世界遺産の「百舌鳥・古市古墳群」を擁し、戦国時代は自治都市として栄えた同市。豊かな歴史、観光資源をもつが、観光地としての魅力をいかに打ち出すかが課題だった。モンハンを通じ、ゲームのファンが多い若年層に堺の伝統工芸や観光スポットの魅力を知るきっかけにする狙いだ。
3年前から再現武器の製作が動き出し、造形が日本刀に近く、モンハンらしい装飾が施されているということから、カカルクモナキが選ばれたという。
製作に挑んだのが、堺打刃物の水野鍛錬所(堺市堺区)代表取締役、水野淳さん▽木彫前田工房(大阪市北区)の前田暁彦さん▽プロモデラーの山口雅和さん-の3人だ。
刀匠でもある水野さんが極軟鉄で刀身を作り、前田さんが、だんじり彫刻で培った腕前で鞘や装飾部分を形作った。仕上げの彩色を担った山口さんは「水属性のドラゴンから作られた武器なので、そのぬめり感、弾力を見た目にしたかった」と苦労を振り返る。そのリアリティーは堺の職人の技術力の高さを見せつけたといえそうだ。
ゲームの装備、設定画に加え、堺でかつて生産された日本刀や火縄銃など歴史上実在した武器も披露された。
堺市の担当者は「ゲームのファンである若い人やファミリー層が多く訪れ、手応えを感じている。今後も堺に関心が薄い世代に合った発信に努めていきたい」と話す。ゲームと現代の職人の異色のコラボ。地域の魅力発信を目指す市の奇策は果たしてどんな効果をもたらすか、関係者は注目している。
文と写真:藤谷茂樹(産経新聞)
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