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Rare earth mining site in Bayan Obo, Inner Mongolia Autonomous Region, China, 2010 (© Sankei Shimbun)
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日本メーカーが、モーターなどのレアアース(希土類)使用を減らす技術の開発を加速させている。特に電気自動車(EV)用モーターに欠かせない磁石では、プロテリアル(旧日立金属)などが現在主流でレアアースの一種「ネオジム」を原料に使った磁石からの代替を狙う。レアアース採掘では中国が約7割のシェアを握り、各国の経済安全保障を脅かしている。各社は中国依存脱却とともに使用量を減らすニーズも拡大するとみて実用化を急ぐ。
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プロテリアルはEVなどのモーター向けに、現在主流のネオジム磁石と置き換え可能な「高性能フェライト磁石」を開発した。既にモーターメーカーなどへのサンプル供給を始めており、問い合わせも寄せられているという。フェライト磁石は鉄を主成分とし、希少なレアアースを使わないためコストを抑えられる。製造方法やモーター内部での配置を工夫し、ネオジム磁石に迫るモーターの最大出力を確保した。
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モーター用磁石では、デンソーも鉄とニッケルだけを原料に使ってネオジム磁石と同等以上の性能を引き出せる「鉄ニッケル超格子磁石」を開発し、数年後に実用化したい考え。また東芝が東北大と昨年開発し、数年以内の実用化を目指す「サマリウム鉄系等方性ボンド磁石」は、調達懸念のあるネオジムを入手しやすいサマリウムに換え、使用量を半減させたにもかかわらず、やはりネオジム磁石並みの性能を発揮できる。
レアアースの使用を減らす動きはモーター以外でも進む。東レはリチウムイオン電池の電極材料を生産する際に細かく砕く用途で使う「高耐久性ジルコニアボール」を開発。安定化剤に使っているレアアースを別の素材に置き換える一方、耐久性を高めて交換頻度を減らし、コストを抑えられるようにした。今後はベアリング(軸受け)など他の用途も開拓し、令和12年度に数十億円を売り上げたい考えだ。
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レアアースは全部で17種類あり、さまざまな用途で使われていることから産業のビタミンと呼ばれる。中国が事実上の対日禁輸に踏み切った平成22年の「レアアース危機」などで重要物資としての認識が高まるにつれ、安定調達が重要な課題となっている。
中国政府はレアアースを使った高性能磁石の製造技術について、禁輸に向けた検討を進めている。中国依存の高さを強みに威圧的態度をとる中国の動向は、使用削減の動きをさらに加速させそうだ。
筆者:井田通人(産経新聞)