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つまるところ、自衛隊の明記をはじめとする憲法改正を阻んできたのは誰か。河野克俊前統合幕僚長が11月10日配信のインターネット番組「虎ノ門ニュース」で、興味深い見解を披露した。その最大勢力は共産党や立憲民主党ではなく、なあなあで済ませる「まあいいじゃない保守」であると。
「もう自衛隊は、国民から信頼を勝ち得たからこれでいいじゃないか。何でエネルギーを使って改憲する必要があるんだ」。こんな保守派が少なくないことが、事態が動かない原因だと河野氏は指摘する。平成11年の国旗国歌法制定時の空気を思い出す。
あの時も、保守派に「日の丸が国旗、君が代が国歌だということは当たり前だから、あえて法制化する必要はないじゃないか」との消極論が目立った。だが、ふたを開けると法律化により、日教組などの国旗国歌反対運動は根拠を失い沈静化した。明記には大きな意味があった。
岸田文雄首相は憲法改正に強い意欲を示し、自民党に「国民的議論のさらなる喚起」を指示した。とはいえ昭和21年のいわゆる憲法制定議会以来、議論はずっと続いている。第1次政権当時の安倍晋三首相が平成18年、歴代首相で初めて「憲法改正を政治日程にのせる」と明言してからも15年がたつ。
「党是で改憲、改憲と言っているが、『やるやる詐欺』だろう」。日本維新の会副代表の吉村洋文大阪府知事は11月9日、自民の姿勢をこう批判した。言葉は乱暴だが、そう言うのも無理はない部分がある。改憲派は護憲派と不毛な議論を繰り返すより、結論を示すべきだろう。
自民には現在、改憲に向け維新や国民民主党との連携を模索する動きがある。現状安住型の「まあいいじゃない保守」を脱し、前に進む好機である。
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2021年11月13日付産経新聞【産経抄】を転載しています