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扉を開けると、元気な声が耳に飛び込んできた。さまざまな毛色の小さな体が走り寄ってくる。身体をすり寄せ、膝の上に飛び乗ってくる小柄な犬もいた。
ここは「HOGOKENCAFE®(保護犬カフェ)」。迎えてくれるのは、飼い主の都合で捨てられたり、年齢や健康面などを踏まえ、ペットの繁殖業者から保護されたりした犬や猫だ。だから、店はペットと触れ合うだけでなく、彼らと里親をマッチングする場所でもある。
カフェは8年前に動物愛護団体のNPO法人「ラブファイブ」(本部・大阪市東成区)が開設した。全国に9店舗あり、1店舗に15匹前後が在籍。全国で引き取り希望者を含む訪問者は1日約250人にのぼる。これまでに新しい飼い主を見つけられたケースは1万6000件を超えたという。
カフェは引き取られた保護犬が里親とともに遊びに来ることがある。この日も、里親となった女性(54)がペットと店を訪れていた。女性が引き取ったのは繁殖犬を引退したトイプードルのココア。このとき、女性の家には高齢で視力を失ったミルクという先輩がいた。ココアは引き取った当初、何度教えても手をかむなど攻撃的な性格だったが、目の見えないミルクに対しては、散歩のときに先導するなど優しかったという。ミルクが持病の発作を起こしたときには、声帯が除去されていたため、本来出るはずのない声を振り絞り、女性に知らせたこともあった。
今はココアも高齢になった。視力も衰え、散歩を怖がるようになったというが、この日は女性に抱かれ穏やかな表情をみせていた。女性は「私のところに来てくれたことに本当に感謝しています」と話した。
ラブファイブ代表理事の吉井純也さん(37)は、気になっていることがある。昨年からのコロナ禍で自粛生活が長引き、癒やしを求めてペットの需要が高まっている。コロナ感染がいったん収まると、仕事が再開されたり、趣味の時間が復活するはずだ。そうなったときに世話をすることを放棄し、ペットを手放す人が増えるのではないか…という危惧を抱いているのだ。吉井さんは「とにかく最期まで幸せにするという決意が必要。覚悟をもってペットを迎え入れ、生活をしてほしい」と訴えた。
筆者:須谷友郁(産経新聞写真報道局)