~~
栃木県足利市ゆかりの刀工・堀川国広作の名刀「山姥切(やまうばぎり)国広」(国重要文化財)が来年春、足利市立美術館(同市通)で再展示の見通しとなった。市制100周年記念特別展「足利ゆかりの名宝展」の目玉で、約3万8千人のファンを集めた平成29年春以来、5年ぶりの展示。刀剣女子らファン待望の再展示で、大きな反響を呼びそうだ。
山姥切国広(刃長約70センチ)は刀に刻まれた銘から、天正18(1590)年2月、当時、足利領主だった平(長尾)顕長(あきなが)の依頼で国広が鍛えた。顕長が小田原北条家から拝領した備前長船長義作の通称「山姥切」(国重要文化財、徳川美術館蔵)を写したとされ、国広の最高傑作とされる。
刀剣ブームの中、山姥切国広は29年3~4月に同美術館で展示され、中国、米国など海外をはじめ全国各地から若い女性ファンが殺到、入館者は約3万8千人に上った。ブームの火付け役とされるオンラインゲーム「刀剣乱舞」で刀剣男士に擬人化された刀剣約100点の中でも特に人気が高い上、9年の東京国立博物館以来、20年ぶりの展示でファンが押し寄せた。
刀剣乱舞とのコラボによる関連グッズ販売や飲食店、宿泊施設など経済効果は市試算で4億円にも上ったことから、地元商店会などはこれまで2度、市に再展示を要望。市は新型コロナウイルス禍で苦境に立つ観光商業対策として、所蔵家と協議し再展示の運びとなった。同名宝展は来年2月11日から3月27日までを予定している。
4年前の足利での展示では託児所の開設、再入館可能としたチケット、地元飲食店の独自メニュー開発など官民連携の徹底したおもてなしが、刀剣女子から「神対応」と称賛された。以来、刀剣ブームが続く中、ほかの人気刀が再三、展示される中で、山姥切国広はどの刀剣展にも展示されていない。「国広の聖地」と認知される足利での待ちに待った再展示に多くのファンが押し寄せそうだ。
堀川国広は日向(宮崎県)出身で、安土桃山から江戸時代初期を代表する刀工。足利との関りのある刀剣は山姥切と山姥切国広のほか、脇差「布袋国広」(国重要美術品、足利市民文化財団蔵)があり、山姥切国広制作と同年の「天正十八年八月日 於野州足利学校打之」と銘が刻まれている。足利に来訪、滞在した経緯は定かではない。
山姥切国広は天正18年の小田原合戦で、長尾顕長がくみした北条家が豊臣秀吉に敗れたことで旧彦根藩士らの間で流転。その後、文献上では関東大震災で焼失したとされたが、昭和35年頃、刀剣研究家が現存を確認し、現在は個人蔵となっている。
筆者:川岸等(産経新聞)