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金沢大学は、同大にゆかりのある日本を代表する哲学者の西田幾多郎(きたろう)と鈴木大拙(だいせつ)にちなみ、哲学・思想・宗教の分野で国際的に卓越した研究者を顕彰し、称える「第3回金沢大学国際賞」に、南山大学(名古屋市)のジェームズ・ウォレス・ハイジック(James W. Heisig)名誉教授(77)=米国籍=に授与することを決めた。2021年11月25日には、授賞式・記念講演が行われ、ハイジック氏は「40年以上の研究を振り返ると、優れた同僚らに恵まれた」と述べた。同氏は、西田哲学の研究に努め、海外への日本哲学発信に大きく寄与した功績が評価された。
記念講演で、ハイジック氏は「西田幾太郎の書物との予期せぬ出会いは、わたしにとって幸運でした」と述べた。
そのうえで、「44年前に来日し、南山宗教文化研究所の初代所長となったヤン・ヴァン・ブラフト(Jan Van Bragt)が指南役となったおかげで、私は手探りでしたが、新しい言語、文化、豊かな宗教的多様性の世界に向かうことができました」と振り返った。
続けて、西田との出会いについて、「ヴァン・ブラフトは、西田に師事した京都学派の西谷啓治(にしたに・けいじ=能登町出身、文化功労者)とも緊密に連携しながら、西谷の宗教に関する最高傑作の英訳を進めました。西谷の業績を探し求めていたところ、すぐに西田の書物にひきつけられました。最初に手をしたのは『善の研究』で、神についての文章を読むと、議論の立て方に興味をそそられました」と述べた。
米国出身のハイジック氏は、ケンブリッジ大学で博士号を取得後、1978年に南山大の南山宗教文化研究所で研究員として活動を始め、所長を経て、2013年に南山大学名誉教授に就いた。西田哲学を中心とした「京都学派」をめぐっては、欧米言語での翻訳版を出版したほか、国際シンポジウムの開催にも尽力した。
国際賞の選考委員会委員長で、前東洋大学学長の竹村牧男(たけむら・まきお)氏は「ハイジック氏は、西田を中心とした日本哲学研究に大きな業績を挙げ、国際的にも高く評価された。その結果、その分野の国際的な展開の機運を醸成し、かつ研究ネットワークの構築にも寄与し、その功績は極めて顕著だ」と、授賞理由を語った。
また、金沢大学医学部出身で国際賞の創設に尽力した臼井溢(うすい・みつる)医師は、ハイジック氏の受賞について「ハイジック先生は、カトリック神父の有資格者とのことですが、西田哲学を論究される姿勢に極めて崇高に人格を感じ、感銘を受けました。素晴らしい方が受賞され、大変うれしく思います」と称えた。
西田と大拙は、ともに金沢大学(旧制第四高等学校)出身で、哲学の分野で世界的偉業を達成した両氏に敬意を表することから、同大学は2017年、同賞を創設した。
https://www.kanazawa-u.ac.jp/university/corporation/kokusaishou
金沢大学国際賞今回が3回目で、前回の2019年は西ワシントン大学の遊佐道子(ゆさ・みちこ)教授、2018年の第1回はフランス極東学院のジラール・フレデリック名誉教授が受賞した。