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環太平洋連携協定(TPP)に加入申請した台湾のTPP問題担当閣僚、鄧振中政務委員は19日までに、産経新聞のインタビューに応じ、TPP加入について「国際貿易自由化の流れに取り残されないための必要措置だ」と強調する一方、日本が今年、TPP議長国を務めていることを念頭に、加入実現に向けたワーキンググループ(作業部会)の早期創設を訴えた。
詳しい内容は以下の通り
-なぜ台湾はTPPに加入したいのか
「台湾のTPPへの加盟は、国際貿易が自由化していく大きな流れの中に、取り残されないための必要措置だと考えている。加入できれば、台湾の経済にとって大きなプラスとなり、経済成長率は+2%との試算もある。台湾はこれまで輸出産業を大事に育ててきた。私たちの工業製品も農作物も非常に競争力がある。しかし近年、二国間の自由貿易協定、または自由貿易の国際枠組みが次々と作られる中、台湾は政治的理由でこの流れになかなか入っていけないのが実態だ。今後、台湾だけが関税を課されるようなことがあれば、輸出産業は大きな打撃を受ける。逆にTPPに早期参加できれば、道は大きく開けてくる。例えば、台湾の果物のおいしさは世界的に有名だ。現在のTPPのメンバー国合計で、毎年2000億ドル以上の果物の潜在市場があるといわれるが、いまの台湾はこの11カ国に対し年間約16億ドルしか輸出していない。もちろん自動車産業など影響が出る産業もあるが、時間をかけて調整していけば解決できない問題ではないと考えている」
-今後のスケジュールは
「私たちはこれまで5年間、法整備を含めてさまざまな準備を重ねてきた。満を持して参加申請を提出した形だ。日本の茂木敏充外相がいち早く歓迎を表明してくれたことに心より感謝している。これからはメンバー国で協議し、問題がなければ、台湾を受け入れるワーキンググループを立ち上げ、正式な交渉に入ることになる。英国は今年の2月に参加申請をし、9月にワーキンググループの初会合が開かれた。台湾は11のメンバー国とも良好な関係にあり、普通に考えれば問題なく参加できるが、中国がさまざまな手段を使って妨害してくる可能性があり、私たちの希望として、できればワーキンググループを早期に作っていただきたい。そして、日本のような自由と民主主義などの価値観を共有する国にワーキンググループを主導していただければ、心強くなる」
-中国は台湾より先に加入申請をしたが
「中国が台湾より先にTPPに加入するようなことがあれば、台湾にとって大変不利になることは確かだ。TPPは世界貿易機関(WTO)と異なって、労働者の権益保護、環境保護などに対する規制があり、台湾はすでにクリアしているが、中国はこれらの条件を達成するのに長い道のりが必要だと考える。しかし、中国には大きな市場があり、外交力もある。中国はすでに台湾の加入についてはっきりと反対する意思を表明している。これからは中台の加入をめぐり、TPPを舞台に激しい駆け引きが展開されると考える。われわれは中国の反対を阻止できないが、台湾は国際貿易の中で、ルールを守る信頼できるパートナーであることをアピールし、できることは一歩ずつ推進していくしかない。幸い、国際社会で台湾を応援してくれる友人は近年増えつつある。その友人たちと力を合わせて、できることをやっていきたい」
-日本の福島県などの食品の輸入解禁問題はどう解決されるか
「われわれはこの問題に真剣に向き合い、対処していくつもりだ。私たちは食品を輸入する場合には3つの原則がある。まずは国民の健康を守る。それから、科学的根拠に基づく。そして国際基準に基づく。この3つの原則に違反していなければ、輸入をとめる理由はない。台湾の民衆は福島県などの食品の安全性について誤解があり、この誤解を解く努力をしなければならないと考える。最近、米国は日本の食品の輸入をほぼ全面的に解禁した。米国は食品の安全を非常に重視している国で、そのやり方は私たちにとって大いに参考になる。今後、日本政府と交渉していく中で、この問題がうまく解決されることを確信している」
聞き手:矢板明夫(産経新聞台北支局長)