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日本語が堪能な香港民主活動家として知られた周庭(アグネス・チョウ)氏(27)は12月3日、SNSを通じ、9月に香港を離れてカナダの大学院に留学していることを明らかにした。トロントに在住する周氏は12月4日、産経新聞の取材に「民主化活動を再開するかまだ決めていない。カナダに中国の秘密警察が置かれていると報じられている。外国にいても身の安全がとても心配だ」などと胸中を語った。
周氏はSNSで「香港には一生戻らない」とも述べ、事実上の亡命宣言と受け止められている。
周氏は、2014年の香港民主化運動「雨傘運動」などの際に普通選挙の実現を求めて闘い、香港の「民主の女神」として知られた。しかし20年8月に、香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕。その後、無許可集会を扇動した罪などで禁錮10月の判決を受けた。21年6月に出所した後は沈黙を貫いていた。
周氏はSNSで、出所後も再び警察に逮捕されるのではないか-とおびえる日々が続いたと明かした。医師の診断で、パニック障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、鬱(うつ)病であることが分かったという。
今年に入り、このままじっとしているより外国に留学したいと考え、カナダの大学院への進学を決めた。しかしパスポートは当局に没収されたままで、海外渡航できない状態が続いていた。
このため、香港警察の国安部門に申請すると、政治活動に再びかかわらないことなどを約束する書面の提出を求められた。さらにパスポートを返却する条件として、国安担当者とともに中国本土の深圳に行くことも要求された。周氏は8月、5人の国安担当者と深圳に向かい、展覧会で中国共産党や歴代指導者の業績を見学させられた。その後、「祖国の偉大な発展を理解させてくれた警察に感謝します」との文書を書かされたという。
こうして9月からトロントでの生活を始めた周氏は12月末に香港に戻るつもりで航空券も購入していた。警察への報告義務があったためだ。しかし香港に戻らないことを決めた。周氏は産経新聞の取材に「香港の状況や自らの安全、健康などを考慮した。とてもつらい決断だった」と語った。
筆者:藤本欣也(産経新聞)
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中国が〝亡命〟表明を非難
香港の元民主活動家、周庭氏(27)がカナダに拠点を移し、香港に一生戻らないと事実上の亡命を表明したことを巡り、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は12月4日の記者会見で、「香港警察は法の支配に挑戦する無責任な行動を強く非難した。中国、香港は法治社会だ。いかなる人にも法外特権はなく、違法行為は法で罰せられる」と非難した。
筆者:桑村朋(産経新聞)