Prime Minister Abe Must Lead Debate on Constitutional Reform

Prime Minister Abe Must Lead Debate on Constitutional Reform

 

ブッシュ公共政策行政大学院エキスパート トーマス・シンキン氏

 

記録的な長期政権を築いた安倍晋三首相は、それまで1年ごとに首相が交代し、政策の継続性が強く疑問視された日本の政治に安定をもたらした。また、その政策は日本を「普通の大国」に大きく近づけた。憲法改正に向けた世論を喚起し、自衛隊を近代化させ、強力な外交政策を推し進めた。安倍首相は戦略的思考の持ち主でもある。

 

私が東京の米大使館で若手館員だった当時、中堅の国会議員だった安倍首相とよく会っていた。他の議員らが「貿易摩擦」など目先の懸案を話題にする中、安倍首相はアジアにおける日本の役割や中国問題、米日同盟強化の重要性について好んで話した。常に興味深い事柄に言及し、深い感銘を受けたのを覚えている。

 

「自由で開かれたインド太平洋」構想の発案者は安倍首相であり、それを米国が採用した。中国と北朝鮮にも効果的に対処した。

 

また、米国との関係ではトランプ大統領との間で極めて有効な個人外交を展開し、日本にとって大きな救いとなった。もし、安倍首相がいなかったら、例えば駐留米軍経費負担の交渉は、米韓と同様に険悪なものとなっていただろう。米日の貿易協議も実際以上に難航していたはずだ。

 

安倍首相が退場する一方で、米大統領選で共和党候補のトランプ氏が再選された場合、新首相はトランプ氏との関係を一から築き上げる必要に迫られる。

 

1980年代、当時のレーガン大統領は中曽根康弘首相と親密な関係を構築したが、後任の竹下登首相とは相性が最悪で、個人外交に基づく蜜月時代は桜が散るように一夜で消滅した。そうした歴史が繰り返されるのを危惧する。

 

一方、民主党のバイデン前副大統領が当選した場合は、互いに新鮮なスタートを切れる意味で好ましいとの考え方もできる。

 

ただ、トランプ氏が米日同盟の重要性を理解しているのに対し、(バイデン氏が仕えた)オバマ前大統領は日本への冷淡さが目立った。2013年に中国の習近平国家主席と会談した際は、(中国が実効支配を画策する)尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関し「双方に自制を求める」とした。

 

同盟国が脅威にさらされているのに「中立」を表明するなどあり得ない。オバマ前政権下では米高官が日本を無視して中国を訪れる「ジャパン・パッシング」も横行した。

 

新首相は、バイデン政権になった場合、歴代民主党政権による同様の負のパターンに進ませないよう、迅速に行動する必要がある。

 

聞き手:黒瀬悦成(産経新聞ワシントン支局長)

 

 

【プロフィル】トーマス・シンキン
1958年生まれ。米タフツ大フレッチャー法律外交大学院博士課程修了。89年に国務省入りし、軍縮大使代行などを歴任。退官後はダニエル・モーガン国家安全保障大学院副学長などを経て、今年8月から現職。

 

 

2020年8月30日付産経新聞【安倍政権を振り返る】を転載しています

 

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