~~
日本でビジネスを行う外資系企業の過半数が、日本市場の安定性と成長性に期待していると前向きな見方を持っている――日本貿易振興機構(JETRO)が2022年秋に実施した調査結果だ。
外資系企業のビジネス実態アンケート調査
JETROは日本国内に事業拠点を置く外資系企業6607社を対象に、日本におけるビジネスの意識調査を実施し、その結果を発表した。調査期間は2022年10月から11月に実施し、1348社から有効回答を得た(回答率20.4%)。調査の目的は、日本のビジネス環境の魅力と課題、必要とされる支援について把握するため。同調査は2021年に次いで2回目となる。
日本でのビジネスは安定性と成長性で期待感
調査結果では、過半数の企業が日本国内でのビジネスに中長期的に成長性を感じ、事業の強化と拡大の意向があるとポジティブな見方をしている。最大の魅力は「市場規模」であり、製造業では顧客企業や関連産業が集積している魅力があるとしている。約3割の企業は日本企業や大学の研究機関との協業・連携による研究・開発の実施と検討への期待も持っている。
課題は人材確保
一方で課題として、人材確保の難しさと改善を挙げている。日本人の経験者採用が中心だが、英語などの外国語能力を持つ人材は不足し、アジア系企業は留学生の雇用志向があるとしている。優秀な外国人材の就労には、行政手続きの簡素化や在留資格の緩和を希望している。
2022年の事業環境の考慮
2022年は2月のロシアのウクライナ侵攻に始まる大幅な円安、資源価格高騰、物価上昇、国際物流の混乱など特別な懸念材料が発生している。一方で新型コロナウイルス感染の状況は下期には一服した。これらの外的要因の影響について、調査を担当したJETROの対日投資部対日投資課は、「質問項目がたくさんあり、戦争などの影響について敢えて今回質問項目は立てていない。調査期間における世界的な物価高の中で日本の物価はそれほど高騰しておらず、それ以上に日本市場が安定している点が外資系企業から評価されているようだ。ウクライナ侵攻などの要因は間接的な影響はあると思われるが、直接的な影響は少ないと思われる。」と答えている。
2022年秋からは米国のIT大手が景気後退懸念から経営の効率化を図って人員の大量解雇に転じるなど、日本法人でも人材削減の動きがある。その一方で、台湾の半導体製造大手は台湾での事業集中を見直して、日本に工場の新設計画を表明している。米中関係の悪化や台湾有事への懸念など、中国市場への先端技術投資を避ける傾向が強まっている。地政学的なリスクにも注意が必要だ。
筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)