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Chikage Oogi, former President of the House of Councillors. (© Sankei by Kengo Matsumoto)
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女性初の建設相、参院議長や初代国土交通相を歴任した扇千景(おおぎ・ちかげ、本名・林寛子=はやし・ひろこ)氏が9日、食道胃接合部がんのため、東京都内の病院で死去した。89歳。告別式は27日正午、東京都港区芝公園4の7の35の増上寺光摂殿。喪主は長男、中村鴈治郎(なかむら・がんじろう)=本名・林智太郎=さん。
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兵庫県出身。県立神戸高卒業後、宝塚歌劇団に入り、映画「照る日くもる日」などでヒロインを務めた後、東宝入りし女優となった。昭和33年に歌舞伎俳優の二代目中村扇雀(後の人間国宝、四代目坂田藤十郎)さんと結婚し、テレビドラマや、フジテレビのワイドショー番組「3時のあなた」の司会者として人気を博した。52年の参院選全国区に宝塚出身者として初めて自民党から出馬し、初当選。5期務めた。
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平成6年、自民党を離れて新生党に入り、新進党、自由党にも参画した。
12年、自民、公明両党との連立政権を維持するため自由党を離れて保守党結党に参画、党首に就任した。同年7月に第2次森喜朗内閣の建設相兼国土庁長官で初入閣し、13年に初代国交相に就任。小泉純一郎内閣でも続投した。
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16年には参院議長に選出された。19年に夫を支えるため「余力のあるうちに時間が欲しい」と政界引退。22年には女性として初めて桐花大綬章を受章した。
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「女は駄目」と言われぬよう…
「〝初〟の文字がつく多くの経験をした」。平成19年5月、政界引退を表明した記者会見で、そう語っていた。その言葉通り、昭和52年の参院選全国区に宝塚歌劇団出身者として初めて自民党から出馬し、初当選したほか、平成13年に初代の国土交通相を務め、16年には女性初の参院議長に選出されるなど政界では「初」がつきまとった。
引退後に上梓(じょうし)した回顧録「決断のとき」(世界文化社)で、「『やっぱり女は駄目だ! 二度と女にはこのポストは与えない!』とだけは言われないように、いや、むしろ女で良かったと言われ、後輩に道を開けるように務めなければ、とのプレッシャーがかなりあった」とも記していた。
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初当選後は6年に自民党を離党し、新生党に入党。新進党、自由党、保守党、保守新党を経て15年に復党した。歯に衣(きぬ)着せぬ「直言」で政党を渡り歩いたのも、「噓をつかないこと。本音が一番強い」という政治信条があったからだ。
森喜朗内閣で「建設行政については全くの素人といってよい状態」(同書)だったにも関わらず、女性初の建設相に任命された。前任者が逮捕されたばかりで、国会での野党の批判をかわすためと指摘され、就任記者会見では「なぜ、私なのか、いささか思う点があった」と率直に語った。
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保守であり、改革派であることを自負。憲法改正など国の根幹にかかわる課題で参院がリードすることを目指した。ともに保守党を結成した自民党の二階俊博元幹事長は「国政で大いに活躍され、国家の発展に大きく貢献された」とするコメントを発表した。